環境問題における所有論の限界と環境保全の論理構成

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  • The Limitations of Property Theory in Environmental Problems and the Legal Construction of Conservation

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抄録

<p>わが国において、環境を保全する権利として環境権は必ずしも承認されているわけではない。このような状況のもとで最近、所有論に依拠して環境保全の論拠を提示しようとする議論が見受けられる。その論点を一言でいえば、地域に居住する住民には共同占有権(都市地域)、総有権ないし入会権(農山村地域)が存在し、それが環境保全の権利根拠になり得る、というものである。しかしこういった議論は次の点で問題が残る。</p><p>(1)入会、総有は基本的に封建的所有形態であり、封建的な共同体(Gemeinde)が解体した近代以降の社会においては存続し得ない。</p><p>(2)また住民がそこに居住していることの反射的な権利としての入会的な権利は法律の保護の対象とはならず、したがって環境保全の権利根拠とはなり得ない。</p><p>(3)入会的な山林所有の形態はわが国の歴史的現実に照らしてみても環境保全的であるとはいい難い。</p><p>このように所有の視点を環境保全の論拠とすることには限界がある。そこでこの限界を突破するための環境保全の戦略として、この小論では(1)環境権の中核としての人格権が差し止め請求の法的根拠として判例上認定されていることを足場として、身近な生活環境に関する保全の論拠を提示し、また(2)貴重な自然環境の保全についても、個々人の利益の集積を代表するという論理で、裁判における「訴えの利益」を主張していく、という方向性を提示した。</p>

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