公共事業における草の根運動の成功の要因――地下鉄8号線建設を事例として――

書誌事項

タイトル別名
  • Factor of a Success of the Grass-roots Movement in Public Works : With The subway No.8 Line Construction
  • コウキョウ ジギョウ ニ オケル クサノネ ウンドウ ノ セイコウ ノ ヨウイン チカテツ 8ゴウセン ケンセツ オ ジレイ ト シテ

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説明

<p>地下鉄8号線(池袋一成増間)の建設は,通称36(さぶろく)道路(池袋一環七間)の事業中断の影響で困難な事業運営を強いられた。本稿はこの建設をめぐり1975年から地下鉄開通後の86年頃まで,事業者(営団)と地域住民の草の根運動体が繰り広げた交渉=事業の実施を分析する。</p><p>事業開始に先駆け,地域の利害関係者は団体交渉を目的に運動体を結成(1975年)した。そして事業者に直接働きかけて交渉窓口(協議の場)を獲得した。これによって,運動体は「工事地域で生活する住民から見て事業の何が問題なのか」を“公の場所で”明らかにしていった。</p><p>本稿ではこの事例分析を通じて「動員モデル」の拡張を試みた。拡張に使われた仮説は「交渉の結果に影響を及ぼすものは,組織の強さを示す動員される人・モノ・資金等の資源だけではない.むしろ資源の使い方=戦略性が重要である。さらに,政治主体の問題提起の公共性の高さも交渉資源となりうる」である。</p><p>検討した結果,本事例では交渉の局面に応じて政治主体の戦略性と問題提起の公共性が交渉結果に影響を与えたと判断できる。資源動員論ては交渉の説明変数として「資源動員の量=組織の強さ」を示す効率性が重視されている。しかし,資源の動員方法における戦略性も交渉に与える影響が大ぎく,さらに政治主体としての運動体の問題提起の公共性によって補足が必要である。</p>

収録刊行物

  • 公共政策研究

    公共政策研究 6 (0), 157-169, 2006-12-10

    日本公共政策学会

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