地元に留まる専門学校卒業生

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書誌事項

タイトル別名
  • Senmon Gakko graduates living locally
  • Case study around Chofu city and surroundings, Tokyo
  • 東京都調布市周辺の事例

抄録

近年、若者の動向に注目する上で、地元への残留、あるいは地元志向であることが注目されている。若者の動向に関する既往研究では、主に地方で暮らす若者が対象とされ、社会階層や人間関係が残留要因として指摘されてきた。一方、大都市圏における研究では、高卒就職者が対象とされ、企業との実績関係や高校時代のアルバイト経験を背景とする地元での就職を理由に生活圏が狭域であるとされた。しかし、大都市圏では、1990年以降に若者の高学歴化が進行したことに伴い、高卒就職者の割合は低下している。そのため、高卒就職者以外の学歴をも包括した検討は大都市圏の若者の動向を把握する上で重要な課題である。これらを踏まえ、本発表では、専門学校卒業生を対象として、彼らの生活圏(通学圏・通勤圏)を明らかにする。専門学校は高校卒業後の進路として、就職よりも選択されており、既往研究においてもほとんど触れられていない。対象地域は東京都調布市周辺である。<br>まず、専門卒者の高校時代の生活圏を把握するために、専門進学者を多く輩出している高校を特定し、その学校の通学圏を確認した。その結果、都立普通科高校では、偏差値の低い高校で専門学校への進学者が多く、これらの学校の通学圏は偏差値の高い高校に比べ通学圏が狭域であることがわかった。高校時代の通学圏は生活圏と対応すると考えられるため、彼らは狭域な生活圏で生活してきたと推測される。加えて、彼らが進学した専門学校の所在地は、高校付近や通学時に使われていた鉄道路線のターミナルに集中しており、彼らの生活圏は専門学校進学後も高校時代とあまり変わらないことが伺える。次に、就職後の生活圏を把握するために、専門学校卒業者の就業地を確認した。その結果、初職の就業地にばらつきがみられ、中には都心部に通勤する者もいたが、転職後の就業地は地元(調布市周辺)であることが多かった。初職の就業地にばらつきがみられた理由には、就職活動・企業選択が学校主導であることが挙げられる。離職の理由には、通勤が不便であったこと、職場での人間関係がうまくいっていなかったことが挙げられた。人間関係に注目すれば、地元で働く専門卒者の多くは、専門学校や職場における人間関係が希薄である一方、中学・高校時代の友人関係を現在に至るまで継続する傾向がみられ、その友人たちも学歴や就労環境、生活圏などが同じ境遇であった。<br>以上より、地元に留まる専門卒者は高校・専門学校時代には狭域な生活圏で暮らしており就職後も、転職を契機に再び狭域な生活圏に戻ること、そして彼らの人間関係は、生活圏と同様に高校時代以前からあまり変化していないことが伺えた。これらの結果より、専門卒者も高卒者と同様に狭域な生活圏を形成する可能性があること、そして、生活圏と人間関係とは、密接であることがわかった。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564238095289472
  • NII論文ID
    130007628516
  • DOI
    10.14866/ajg.2019s.0_273
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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