ウガンダ南西部ニャムリロ湿地の農地転換と換金作物の栽培

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タイトル別名
  • Agricultural land use in Nyamuriro swamp, southwestern Uganda

抄録

ウガンダは近年、周辺諸国に農作物を輸出する農業国として高い経済成長率を持続しているが、人口増加とあいまって土地不足の問題が深刻となっている。本発表では、2018年8月から9月の調査結果から、ウガンダ南西部に位置するニャムリロ湿地(Nyamuriro swamp)の開墾の経緯と現在の土地利用を明らかにしたうえで、土地不足が深刻な地域における国有地の開放政策、そして国有地における換金作物の導入課程と農地利用の実態を報告する。<br> ウガンダ南西部ではグレートリフトバレーが南北に走り、その標高は1,220mから2,350mの起伏がある高原地帯となっている。この地域は肥沃な土壌と降水量に恵まれ、農業適地となっており、植民地期以前からこの地域の人口密度は高かった。この地域に居住する農耕民チガ(Kiga)の人びとは丘陵全体を開墾し、農業に不適な急斜面上の畑でも作物を連作する。長期におよぶ連作のため、作物の収量は低く、土地不足は植民地期から深刻な問題となっている。<br> ニャムリロ湿地はブウィンディ国立公園に隣接し、ブニョニ湖から流れ出るルフマ川に沿って谷部に広がる湿地である。1980年までカミガヤツリが一面に繁茂し、国有地として残され、ウガンダの国鳥であるホオジロカンムリヅルや国際自然保護連合のレッドリストで近危急種に指定されているアカハラセグロヤブモズなどの貴重な鳥類が生息する。湿地で農地の開墾はされてこなかったが、1970年代のなかば以降、肥沃な土壌を利用してジャガイモが栽培され、隣国のルワンダに輸出されている。雨季には湿地の農地が水没するため、高さ1mほどの大きな畝を造成する必要があり、乾季にのみジャガイモが栽培される。雨季の到来にはばらつきがあり、雨季の到来がはやいと畝が冠水し、イモが腐敗してしまう。もとより、虫害が発生しやすいジャガイモを連作するため、人々は労力をかけて深く切り返して畝をつくり、1作期に複数回にわたり高額な防虫剤を使用している。<br> 現在この湿地は、政府の許可を得た複数の農民グループにより農地として利用されている。1975年に旧キゲジ県は産業の育成と地域住民の現金稼得機会の創出、土地不足の解消を目的に、湿地の農地化を計画した。この湿地をはじめて開墾したN農業組合は1978年に設立され、50年間の湿地利用の許可を取得した。当時から組合員は30人で、組合の設立時に土地使用料としてひとり300シリングを県に支払った。使用許可を受けた湿地の面積は約50haで、すべて開墾するのに3年を費やした。組合員は農地を均等に分け、くじ引きで耕作する区画を決め、割り当てられた農地を現在まで使用し続けている。組合は湿地の使用料を毎年県に支払う必要がある。この使用料は1990年時点で50万シリング、2017年では300万シリングと上昇している。この支払は組合員によって分担されている。使用料を支払えなかった組合員は組合から除名され、農地の用益権を失う。<br> N農業組合の設立時からのメンバーであるA氏は、区画内で3筆の農地を利用している。A氏は75歳と高齢のため、みずからジャガイモ栽培の農作業に従事することはない。A氏は長男に17aの農地を貸す代わりに、義務である組合の共同作業を従事してもらっていた。また、隣村の友人に47aの農地を35万シリング、24aの農地を30万シリングで貸し、友人はジャガイモを栽培していた。<br> 調査地域を含むカバレ県のジャガイモ生産量はウガンダ国内でもっとも多く、湿地の開墾と栽培面積の拡大により、ジャガイモは重要な換金作物となった。組合員はジャガイモ栽培に従事するだけでなく、みずからの裁量で用益権を非組合員の農家に貸したり、家族内で農地を分配している。組合員は高額な使用料を毎年支払う必要があるため換金作物であるジャガイモの栽培に特化するか、労働力に乏しい世帯の場合、農地を貸して借地料を受け取っていた。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564238096051200
  • NII論文ID
    130007628494
  • DOI
    10.14866/ajg.2019s.0_207
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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