カナダ,ヴァンクーヴァー大都市圏におけるフランス語話者および非公用語話者の居住パターン

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Residential pattern of French and non-official language speakers in the Vancouver Census Metropolitan Area, British Columbia, Canada

抄録

本報告は,おもに2016年国勢調査に基づいて,カナダのヴァンクーヴァー大都市圏におけるフランス語話者および非公用語話者の居住パターンを検討することを目的としている.報告者は,先にモントリオール大都市圏における非公用語話者の居住パターンを検討した(大石 2018).その直接の動機は,近年ケベック州で論争が続く,移民の宗教的実践をどこまで受け入れるかという問題を前に,多文化化・多民族化が進行するケベック州の実態を把握することにあった.ただ,モントリオールはカナダを代表する大都市のひとつであり,カナダ都市の特徴も有しているはずである.そこで本報告では,モントリオール大都市圏との比較を念頭に,カナダの三大都市圏の一角をしめる,ブリティッシュコロンビア州のヴァンクーヴァー大都市圏を研究対象とした.<br><br> ヴァンクーヴァー大都市圏は約246万の人口を擁し,トロント,モントリオールに次ぐカナダ第三の大都市圏であり,中心市となるヴァンクーヴァー(約63万)のほか,サリー(約52万),バーナビー(約23万),リッチモンド(約20万)などの都市によって構成されている(人口はいずれも2016年).ヴァンクーヴァーはロッキー山脈から西流するフレーザー川の河口付近に発達した港町であり,20世紀に入って大きく発展した. ヴァンクーヴァー大都市圏もフレーザー川の流域を内陸に向かって広がっている.なお,大都市圏内に16もの先住民居留地が存在するのは,トロントやモントリオールにみられない特色である.<br><br> ヴァンクーヴァー大都市圏において公用語を母語とする人口は56.8%をしめるにすぎず,英語を母語とする人口が55.7%,フランス語を母語とする人口が1.1%である(いずれも単一回答のみ,以下同様).非公用語を母語とする人口は43.2%をしめ,カナダの大都市圏のなかでもトロント大都市圏とともに,群を抜いて非公用語を母語とする人口の割合が高い.そのうちもっとも人口の多い集団は中国語(16.4%)であり,以下パンジャビ語(6.4%),タガログ語(2.8%),韓国(1.9%),ペルシア語(1.7%)と続いている.トロントやモントリオールと比較すると,ペルシア語や韓国語の話者人口が上位をしめているという特徴がある.また,ヨーロッパの言語に関しても,世界的に多くの話者人口をもつスペイン語(1.6%)を別にすると,トロントやモントリオールで上位に位置するイタリア語(0.7%)をおさえて,ドイツ語(1.0%)の話者人口が目立つ点に特徴がある.<br><br> 非公用語話者の人口の割合がもっとも高いのはリッチモンド(65.0%)であり,グレーター・ヴァンクーヴァーA(非自治体地域の集合,61.8%),バーナビー(57.9%),サリー(48.9%),ヴァンクーヴァー(45.5%)と続き,中心市と近隣の郊外の都市に集中している.<br><br> 次に,人口上位15言語集団を対象に,センサス・トラクト単位で立地係数を算出した.その結果,アラビア語(21.14),ヴェトナム語(7.02),タガログ語(5.41),ポーランド語(4.55),ロシア語(5.36),ドイツ語(3.76),ヒンディー語(7.88),パンジャビ語(11.59),ペルシア語(13.68),イタリア語(9.89),ポルトガル語(5.31),スペイン語(4.11),日本語(4.75),韓国語(9.33),中国語(4.30)であった.<br><br><br>文献<br><br>大石太郎 2018. カナダ,モントリオール大都市圏における非公用語話者の居住パターン.日本地理学会発表要旨集 93: 153.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564238096069504
  • NII論文ID
    130007628591
  • DOI
    10.14866/ajg.2019s.0_321
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ