PS mobile bearing type TKA施行後にポリエチレンインサート脱臼を生じた一例

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抄録

Mobile bearing typeの人工膝関節置換術(以下TKA)施行後の早期合併症としてポリエチレンインサートの脱臼の報告が散見されている。今回我々は、当院で施行したPS mobile bearing type TKA後にポリエチレンインサートが脱臼した一例を経験したので、若干の考察を加えて報告する。症例は71歳の女性である。身長は146.5cmであり体重が48.1kg、BMIは22.4であった。X線では北大病期分類の4期の変形性膝関節症であり、この症例に対してPS mobile bearing typeの TKAを施行した。展開はparapatellar approachで行い、脛骨側には厚さ12mmのポリエチレンインサートを挿入した。術中に明らかな膝伸展時の動揺性は確認されなかった。術後のX線で脛骨の骨切り量は内側で5mm、外側で10mm、脛骨後傾角は7.8°であった。術後の経過は特に問題なかったが、術後4日目に可動域訓練を施行中、膝屈曲の際に突然popping sensationを伴う急激な疼痛と膝の変形が発生し、直後のX線にて脛骨側ポリエチレンインサートの後方脱臼を認めた。このため、翌日にインサートの入れ替えを目的として再手術を行った。展開時、インサートは回旋した状態で膝関節後方に逸脱していた。これをまず抜去し、初回手術時より厚い17mmの脛骨側インサートを挿入して安定性を確認し、手術を終了した。インサート入れ替え後は特に問題なく経過しており、現在の膝関節可動域は伸展が-5°で屈曲が130°である。Mobile bearing type TKA施行後のポリエチレンインサート脱臼に対する危険因子としては、肥満の女性や術前の膝外反変形などが報告されている。しかしながら本症例の女性は標準体重であり、なおかつ術前は膝内反変形であった。本症例では、脛骨の骨切り量に対して挿入したインサートの厚さが薄く膝屈曲時の動揺性が生じ、CPMで屈曲した際にインサートの前方が持ち上げられ脱臼したと考えられた。

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