対角枝一枝閉塞の心筋梗塞で前乳頭筋断裂に至った1例

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  • Anterior papillary muscle rupture due to recent myocardial infarction by a single diagonal branch obstruction

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抄録

<p> 79歳女性.一時的な前胸部痛を自覚して近医を受診したところ心電図異常を指摘され,その後CK高値が認められたため,胸痛発症7日後に当院を紹介され受診した.来院時に軽度の背部痛を訴え,収縮期逆流性雑音および心電図上第Ⅰ誘導にST上昇,aVL誘導に異常Q波とST上昇を認めた.両側肺野に異常音を聴取しなかった.経胸壁心エコー図では前壁対角枝領域に限局した壁運動低下,僧帽弁前尖に付着する腫瘤,前尖の逸脱,および重度僧帽弁逆流を認め,乳頭筋断裂を合併した亜急性心筋梗塞と考えた.冠動脈造影にて#7に90%狭窄,#9に100%閉塞を認め,左室造影にて重度僧帽弁逆流を確認した.外科的治療の方針となったが,手術待機中に突然に血行動態が破綻し急性肺水腫を生じたため,緊急手術を施行した.術中の経食道心エコー図にて断裂した乳頭筋が塊状となり完全に左房内への逸脱している所見を認めた.病理にて乳頭筋の凝固壊死と好中球浸潤を伴う新鮮心筋梗塞を認めた.術後の心筋MRIでは粗大な梗塞所見は認めなかった.第58病日に経過良好のため退院となった.急性心筋梗塞に伴う乳頭筋断裂は致命的な合併症である.稀ではあるが本症例のように対角枝領域の小範囲の心筋梗塞で前乳頭筋断裂を生じることもあり,厳重な観察と迅速な対応が重要である.対角枝領域の小範囲の心筋梗塞で前乳頭筋断裂を生じ,緊急手術を行って救命し得た1例を経験したため報告した.</p>

収録刊行物

  • 心臓

    心臓 50 (2), 180-186, 2018-02-15

    公益財団法人 日本心臓財団

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