新潟県の砂丘地において,葉面散布追肥を取り入れた省力栽培が パン用コムギ「ゆきちから」の収量・子実タンパク質含有率に及ぼす影響

  • 島崎 由美
    農研機構 中央農業研究センター 北陸研究拠点
  • 渋川 洋
    農研機構 中央農業研究センター 北陸研究拠点
  • 関 正裕
    農研機構 中央農業研究センター 北陸研究拠点

書誌事項

タイトル別名
  • The Effect of the Labor-Saving Method of Fertilizer Application to Yield and Grain Protein Content of Wheat cultivar 'Yukichikara' in Sand Dune of Niigata Prefecture.
  • ニイガタケン ノ サキュウチ ニ オイテ,ヨウメン サンプ ツイヒ オ トリイレタ ショウリョク サイバイ ガ パンヨウ コムギ 「 ユキチカラ 」 ノ シュウリョウ ・ シジツ タンパクシツ ガンユウリツ ニ オヨボス エイキョウ

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抄録

新潟県の砂丘地におけるパン用コムギ「ゆきちから」栽培では,目標とする収量400 kg 10a-1,子実タンパク質含有率12%を達成するために,5回の追肥を行っている.このうち開花期追肥は,子実タンパク質含有率を高めるために必須であるにもかかわらず,追肥時期が水稲の移植時期と重なり,追肥量が多くコムギの草丈が高いために追肥作業の労力が特に大きい.そのため,生産現場からは開花期追肥を含めた追肥の省力化が要望されている.そこで,開花期に行う赤かび病防除の薬液に尿素を混合し葉面散布することで,防除と同時に追肥する方法が「ゆきちから」の収量や子実タンパク質含有率に及ぼす影響を検討した.さらに,新潟県の砂丘地における「ゆきちから」の収量,子実タンパク質含有率を越冬前と茎立期の追肥を省略し,開花期の葉面散布追肥を取り入れた省力栽培と追肥を5回行う標準栽培で比較した.その結果,「ゆきちから」においても尿素の葉面散布追肥により,葉先や芒に葉焼け症状がみられたものの,硫安施用と同等の肥効が認められた.また,濃度10.9%尿素水溶液を葉面散布した場合であっても,その後の生育や収量,赤かび病の防除効果に影響は認められなかった.砂丘地における省力栽培は,標準栽培と比べて穂数や1穂整粒数が多いことで10%以上増収し,地上部窒素吸収量も多かった.しかし,省力栽培では増収するために子実タンパク質含有率は標準区よりも低くなりやすく,より多くの開花期窒素追肥が必要であると考えられた.以上の結果から,新潟県の砂丘地で栽培した「ゆきちから」において,開花期の赤かび病防除と同時に行う尿素葉面散布追肥が利用できること,省力栽培は標準栽培よりも10%以上増収することが明らかとなった.

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