京都府下における法務局備え付けの明治の地籍図

書誌事項

タイトル別名
  • The Cadastral Map of Maiji Managed by the Legal Affairs Bureau in Kyoto Prefecture

説明

1.はじめに<br><br> 法務局に備え付けられた旧土地台帳附属地図(旧公図)は,その前段階に作られた①壬申地券地引絵図,②地租改正地引絵図,③地籍編製地籍地図,④地押調査,⑤更正地図が基になっている。その成立過程や資料的性格は,府県によって大きく異なっており,明治22年の土地台帳制度移行時に公図として選ばれた種類も異なっている。法務局の旧公図は,全国で普遍的に残る資料であり,これまで盛んに学術利用されている。旧公図が①~⑤の中から選択されていることは,登記関係者の間でも十分には認識されておらず,基礎的研究の進展が求められている。<br><br> 京都府は,他府県に比べて先行研究が進んでおり,地租改正事業と地籍編製事業の変遷が整理されている(竹林1989・1997)。『近代京都の絵図・地図』では,市町村伝来の地籍図の事例が示され,鈴木の研究では,洛中における一筆図の変遷が分析された(鈴木2015)。旧豊岡県については古関の2018年の発表がある。これらの研究を参考にしながら,本発表では,法務局備え付けの旧公図の資料的性格を検証したい。<br><br> <br><br>2.旧京都府にあたる地域<br><br> 京都府は,旧豊岡県が明治9年8月21日に旧京都府と旧兵庫県に分割編入して成立した。旧豊岡県は明治7年2月,旧京都府は明治8年8月に独自の方式の「地租改正ニ付人民心得書」を伝達し,それぞれ異なる方法で土地調査と地図作成が進められた。郡村地の調査は,明治10年5月に概ね終了したが,山林原野の調査が遅れた村落については明治11年から追加調査が行われた。そのため,京都府内では,耕宅地と山林の簿冊が異なる場合がある。<br><br> 旧京都府にあたる地域では,新しい地図に差し替えられていなければ,明治8~9年頃の地租改正地引絵図が旧公図として活用されている。これは,約1/600の縮尺の字限図が基本になっており,各筆には地番・地目・反別が記されている。図の端に字ごとの総反別と地目ごとの内訳があり,奥書では戸長・副戸長・地主総代の署名押印がある(評価人という役職名がみられる場合もある)。一村全図は,字ごとの概略しか描かれておらず,その索引図としての要素が強い。明治18年の地押調査の追加修正などが後から書き加えられている。<br><br> <br><br>3.旧豊岡県にあたる地域<br><br>旧豊岡県では,明治5~6年に壬申地券地引絵図が作られた。そのため,明治7年2月の「地租改正ニ付人民心得書」では,その反別小前帳を土台にするとあり,地租改正地引絵図は基本的に作られなかった。明治18年の地押調査で地図が新しく作られており,これが旧公図に充当された。山林については,明治11年頃の成果がそのまま基になった事例もある。<br><br> <br><br>4.京都市街(上京・下京)と周辺地域<br><br> 明治17年3月に「地籍編纂心得書」が伝達され,上京・下京の市街地は年内に調査が完了した。これは,道路・水路などの官有地の調査を原則とし,民有地は地租改正の成果が充当された。村図の縮尺は1/6000,字図は1/600と定められた。同年11月には,郡村地域の調査を進めるために「心得書」が改訂され,葛野郡,愛宕郡,乙訓郡,宇治郡の一部で調査が実施されたが,地押調査が本格化した明治19年に中断された。<br><br> 上京・下京の市街地の旧公図は,地籍編製地籍地図が基になっている。しかし,府立京都学・歴彩館で公開されているものと比べると,外周に測量値が新しく追記されており,全体的な形が修正された事例が比較的多くみられる。各筆には,地番・地目が記されており,図の端には町ごとの総反別と内訳がある。官有地については,官三(官有地第三種)などと,地種が書き加えられている。周辺の郡村地域でも,地籍編製地籍地図が旧公図の基になった場合がある。<br> <br> このように,京都府内の法務局では,3つの地域で旧公図の成り立ちが異なっている。なお,村落によっては,明治30年代に更正地図が新調され,旧図と差し替えられている場合もある。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564238097688192
  • NII論文ID
    130007628587
  • DOI
    10.14866/ajg.2019s.0_237
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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