光源のサイズ変化における紙の光沢恒常性の解析

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  • コウゲン ノ サイズ ヘンカ ニ オケル カミ ノ コウタク コウジョウセイ ノ カイセキ

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Abstract

<p>私達が目で見る印刷物の印象は,観察時の照明環境で大きく変わる。照明環境で色が異なって見えることは一般に経験するところである。一方で,人間が照明環境による色の変化を認識した上で,本来の色を推測できることは“色恒常性”として知られている。例えば,夕日や白熱電球では本来より赤み掛かって見えるが,人間は元の色を推測して認識できる。印刷物を見るときに,光沢もまた照明環境により大きく変わるもののひとつであるが,このような“光沢恒常性”の有無は,紙の評価環境を考える上で重要な問題である。</p><p>本研究では,印刷サンプルを用いた光沢恒常性について解析を試みた。人工的な照明環境の下での光沢感と材質感の恒常性について実験を行った。サイズを変えた光源を照明とすることによって,光沢感および材質感に関連する恒常性について特徴を調べた。解析には,知覚的均等光沢空間に基づく多次元尺度構成法を用いた。</p><p>実験の結果,人間の行う光沢感の評価は,光源のサイズにより影響を受けることを示した。見た目の光沢感は照明光のサイズの増加に従って減少した。本研究においては,光沢感における光沢恒常性効果は見られなかった。一方,材質感では,被験者は粗さなどの物性に注意を払い,高い光沢サンプルと低い光沢サンプルにおいて,各サンプルの中では光源のサイズが変化しても材質感が一定であると認識した。これは,材質感においては恒常性効果があることを示している。すなわち,本研究では,材質感の恒常性効果の存在が認められ,一方,光沢感は照明のサイズの影響を受け,光沢恒常性効果の存在は確認できなかった。光沢感が照明のサイズに影響を受けることは,産業において,光沢を目視評価で行う上で照明条件は重要な検討課題であることを示唆している。</p>

Journal

  • JAPAN TAPPI JOURNAL

    JAPAN TAPPI JOURNAL 73 (4), 364-370, 2019

    JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY

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