無機ヒ素曝露が皮膚アレルギー疾患に悪影響を及ぼす可能性

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  • Exposure to inorganic arsenic possibly aggravates cutaneous allergy

抄録

<p> 無機ヒ素は、アルゼンチン、バングラデシュ、チリ、中国、インド、メキシコ、アメリカ合衆国等の国々で、地下水中に高濃度で存在しており、現在、50ヶ国の1億4000万人が世界保健機関の暫定ガイドライン値である10 μg/Lを超えるヒ素を含む飲料水を飲んでいることが明らかとなっている。また、近年の疫学的調査において、血中の無機ヒ素化合物濃度の増加が皮膚炎やアレルギー喘息の罹患率を増大させることが示唆されている (Hossainら、2018)。本研究では、不明点が多い無機ヒ素化合物曝露とアレルギー性皮膚炎発症の直接的な関連性を、培養細胞およびマウスモデルを用いて調査した。まず、ヒト好酸球性白血病細胞 (EOL-1) 、ヒト急性単球性白血病細胞 (THP-1) およびヒト表皮正常角化細胞 (PHK16-0b) に無機ヒ素を24時間曝露し、リポ多糖 (LPS) ないしダニ抗原抽出物 (ITEA株式会社) 刺激による炎症性サイトカイン産生量 (IL-1β, IL-8, TNFα) をELISA法により測定した。結果、好酸球様の反応を示すEOL-1細胞において、LPSないしダニ抗原刺激後のIL-8産生量が有意に増加した。LPSの刺激では、IL-1β産生量の有意な増加も確認された。樹状細胞様の反応を示すTHP-1細胞においても同様の傾向が観察され、ヒ素濃度依存的IL-1β、IL-8およびTNFα産生量が有意に亢進していた。ヒト表皮角化細胞においても、無機ヒ素曝露によってLPSないしダニ抗原刺激後のIL-8産生量が有意に増加していた。IL-8は感染や炎症における重要なメディエーターであり、TNFαはアレルギー反応や慢性炎症などに直接的に関連する炎症性サイトカインである。IL-1βは皮膚に好酸球を誘導することが知られている。本研究結果より、無機ヒ素の曝露が好酸球、樹状細胞および角化細胞のサイトカイン産生に直接影響を及ぼす事が証明された。現在、in vitroの結果を検証すべく、マウスモデルを用いた検討を実施中である。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564238106569600
  • NII論文ID
    130007677400
  • DOI
    10.14869/toxpt.46.1.0_p-143
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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