マイクロ波加熱による高速アスベスト無害化技術

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  • ~高温材料プロセスにおけるマイクロ波 加熱の応用例~

抄録

廃棄物処理問題において、「アスベスト含有材の迅速加熱」は重要な課題である。多くの専門家はアスベストの有毒性を古くより指摘してきたが、これが重要な課題と認識されるには1960年代まで待たなければならない。この時期には、米国、英国、南アフリカにて集団中皮種、悪性腫瘍が報告され、これらの健康被害がアスベスト由来である事が指摘された[1-3]。これらの事件をきっかけとし、アスベストの有毒性は重要な社会問題として認識されるようになった。我が国においても1975年に吹き付けアスベストの使用規制、2005年には石綿0.1%以上を含む製品の出荷が原則禁止など、アスベスト代替及びそれに伴う法的整備は着実に進んでいる。このような背景を受け、現在のアスベスト問題は「アスベスト製品をどのような物質で代替するのか」から、「既に使用されたアスベスト材をどのように処理するのか」といった課題へと変遷してきた。アスベストは、高温処理(法令上は1500℃の処理がとされる)を行うことでその毒性を除くことができる。しかし、アスベストを含む材料の温度を上げる事が極めて困難であるため、アスベスト無害化処理のコストは非常に高価である。それに対し、世界的に見ても既に出荷されているアスベスト含有物質製品の量は非常に多い。例えば、我が国における石綿含有建材の累積出荷量は、平成15年においては4,300万トンであり、この多くは住宅屋根用化粧スレートをはじめとしてスレート板・瓦に用いられている[4]。これらの物質は高い断熱性を有しているので、その無害化高温処理には長時間の高温処理が必要となるが1050℃で加熱された「アスベスト含有物質は高い断熱性をもつため加熱が困難である事」が、アスベスト無害化プロセスの効率を大きく損ね、これが高価格に直結している。アスベスト含有物質は従来の熱工学的な加熱アプローチに制限を加えている事(つまり、「粉砕処理」が適切でない事)も、無害化処理の低価格化への大きな障害となっている。従来の物質を対象とする場合であれば、対象物を砕いて粒子直径を小さくし、これにより熱供給を円滑にする方法がとられる。しかし、アスベスト含有物質の場合は「砕く」工程は二次飛散を生じ、アスベストの毒性を高めてしまう。そのため、「砕く」工程を省きつつ、アスベスト含有物質の内部まで迅速に加熱する技術が望まれる。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564238109730560
  • NII論文ID
    130007678363
  • DOI
    10.32304/jemeabulletin.2.2_26
  • ISSN
    24341495
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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