アンドロゲン抑制療法施行前立腺癌患者におけるサルコペニア肥満の有病率および骨格筋特性

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> アンドロゲン抑制療法(ADT)は、アンドロゲンの分泌を抑えて前立腺癌細胞の増殖を抑制する治療であり、前立腺癌における薬物療法の根幹をなす。一方で、ADTは男性ホルモンの分泌量を極端に抑制するため、加齢の影響以上に骨格筋の量的・質的な特性を変化させ、サルコペニア肥満を招きやすいと考えられている。しかし、本邦においてADT中の前立腺癌患者におけるサルコペニア肥満の有病率や骨格筋特性を調査した報告は少ない。そこで本研究の目的は、ADT施行前立腺癌患者におけるサルコペニア肥満の有病率および骨格筋特性を明らかにすることとした。</p><p>【方法】</p><p> 対象は、ADT施行外来前立腺癌患者とし、重篤な骨関節疾患、中枢神経疾患を有する者は除外した。サルコペニアの判定は、AWGSの診断基準に従った。肥満の定義は、体脂肪率25%以上とし、サルコペニアと肥満の組み合わせによって対象を4群に分類した(①サルコペニア肥満、②サルコペニア単独、③肥満単独、④ノーマル)。調査項目は、基本属性、医学的情報、身体機能に加え、骨格筋特性として出力、質、量の指標を測定した。“出力の指標”では、徒手筋力計により膝伸展トルク(Nm)と膝伸展トルク体重比(Nm/kg)を測定した。“量の指標”では、生体電気インピーダンス法により計測した四肢骨格筋量(SMI)と大腿部筋体積量、超音波画像診断装置による大腿前面筋の筋厚を測定した。さらに“質の指標”では、膝伸展トルクと大腿前面筋厚よりmuscle quality(Nm/cm)を算出した。統計解析では、これら測定値を4群間で比較するために、一般線形モデルを用いて分析した(アウトカム:各測定項目、要因:4群)。さらに、有意差が認められた項目についてはBonferroni法による多重比較検定を行った。</p><p>【結果】</p><p> ADT施行前立腺癌患者89名(79.8±6.4歳、全例男性)が対象となり、内訳はサルコペニア肥満12名(85.9±4.4歳)、サルコペニア14名(82.9±4.2歳)、肥満34名(79.4±6.4歳)、ノーマル29名(76.2±6.4歳)であった。サルコペニア肥満の有病率は13.5%であった。一般線形モデルの結果では、大腿直筋の筋厚を除く全ての項目で有意差を認めた(p<0.05)。多重比較検定の結果では、“量の指標”であるSMIは、ノーマル・肥満と比較してサルコペニアおよびサルコペニア肥満で有意に低い値を示した(p<0.01)。筋体積量では有意な群間差はなかった。“質の指標”であるmuscle qualityと“出力の指標”である膝伸展トルク体重比では、いずれもサルコペニア肥満で最も低い値を示し、ノーマルと比較して有意に低かった(p<0.05)。</p><p>【結論】</p><p> ADT中の前立腺癌患者は、地域在住高齢者を対象とした先行研究と比べてサルコペニア肥満の有病率が高いことが示された。また、サルコペニア肥満を有する者は、骨格筋の質および出力の指標が顕著に低下した状態であることが示された。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は筑波大学倫理審査委員会の承認を得たうえで、ヘルシンキ宣言に則って実施した。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), C-58_1-C-58_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564238110809344
  • NII論文ID
    130007692785
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.c-58_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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