地域在住高齢者の呼吸機能には四肢筋量・運動機能・認知機能が影響する

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抄録

<p>【はじめに、目的】地域在住高齢者の約10%以上に,潜在的な呼吸機能障害があることが報告されている(Yoshikawa, et al. 2017).一方,地域在住高齢者の呼吸機能には,一般的に年齢・体格・性別が影響するが,体組成や運動機能,認知機能の影響については研究が不足している.本研究では,地域在住自立高齢者を対象に,呼吸機能に対する体組成・運動機能・認知機能の影響について検討した.</p><p>【方法】対象は,要介護認定のない65歳以上の地域在住自立高齢者447名(男性113名,女性334名,平均年齢71.2±4.5歳)とした.除外基準は,心疾患や呼吸器疾患を有する対象者,明らかな認知機能障害を有する対象者,体内に金属インプラントのある対象者とした.調査項目は,呼吸機能として努力性肺活量(Forced vital capacity:FVC),体組成として四肢筋量,さらに運動機能および認知機能について調査した.四肢筋量はバイオインピーダンス法にて測定し,Changら(2017)の報告に従ってBody Mass Index(BMI)で除して補正した.運動機能としては,握力,膝伸展筋力,Timed Up and Go Test(TUGT),5回Chair Stand Test(5-CST)を測定した.また,認知機能に関しては,タブレットPCを用いてTrail Making Test part A(TMT-A)を測定した.加えて,基本属性として病歴,身長,体重を調査した.統計解析は,FVCと各変数との関連性を単変量解析にて検討した.その後,単変量解析で有意な関連性を示した変数を独立変数とし,FVCを従属変数とするステップワイズ法重回帰分析を行い,FVCに関連する要因を検討した.なお,統計学的有意水準は5%とした.</p><p>【結果】対象者のFVCは,標準値に対して平均95.8(42.2〜140.2)%であった.単変量解析の結果,FVCは年齢,性別,身長,体重,四肢筋量,握力,膝伸展筋力,TUGT,CST,TMT-Aと有意な関連を示した.一方,重回帰分析の結果,年齢・性別・身長に加えて,四肢筋量,膝伸展筋力,TUGT,TMT-Aが有意にFVCと関連を示した(調整済みR2=0.69).すなわち,四肢筋量と膝伸展筋力は高いほど,TUGT,TMT-Aは時間が短いほど,それぞれFVCが高いことが示された.</p><p>【結論】地域在住自立高齢者の呼吸機能には,年齢・体格・性別に加えて,四肢筋量,運動機能,認知機能も影響することが示された.従って,地域在住自立高齢者における呼吸機能障害の予防・改善には,身体機能や認知機能の評価・介入も重要であることが示唆された.本研究の結果は,高齢者の肺炎予防戦略における重要な示唆を与えるものであると考えられた.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究は北里大学医療衛生学部研究倫理審査委員会の承認をうけて実施した(承認番号 2016-G021B).また,全対象者に対して書面にて研究参加に関する同意を得た.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), C-88_1-C-88_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564238110812672
  • NII論文ID
    130007692720
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.c-88_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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