新規開設のリハビリ特化型デイサービスの地域における運営戦略

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  • ─外部マネジャーとしてのマネジメントの関わりの報告─

抄録

<p>【はじめに】</p><p>近年,リハビリ特化型と標榜されるデイサービスは増加傾向である。しかし,その実情は理学療法士(以下,PT)などリハビリテーション専門職種が実際に配置されていることは少い。まだまだ地域においてPT のニーズはあると考えられるが,近年の介護報酬改定の影響は運営に厳しく,昨年度は過去最大の倒産件数であったとの厚労省の報告もある。今回,外部マネジャーとして新規開設に携わったのでその運営戦略を報告する。</p><p>【方法】</p><p>デイサービスの開業を検討している株式会社代表のPT(通所系事業の経験無し)から,開設にまつわるマネジメントの依頼を,筆者が外部マネジャーとして受ける。介入としては①開設まで週1 ‒ 2 回の面談やオンラインでの相談にて,開設エリアは大阪市内であり,そこから区レベルまで絞って,運営コンセプトや施設規模を設定した。次に,各区の高齢者数及び要介護認定率や競合の調査など地域ニーズを踏まえて,テナントを決定した後,ケアマネ営業に同行した。②開設後は週1 回の現場介入を行ないオペレーション面の助言やスタッフ教育,契約者の紹介の傾向分析,ホームページやブログの作成などの広報や,デイサービスの新しい取り組みや新規事業の検討などを行なっている。なお,事業形態は3 ‒ 4 時間の短時間型で午前,午後の2 回転。営業日は月~金の週5 日。入浴と食事は無しのリハビリ特化型デイサービスで定員9 名の地域密着型の規模とした。リハのコンセプトは「生活を変える。家で出来る。」とし,ADL 面や社会参加面での課題解消を目的にし,大規模なマシーンは使わず,個別に製作した家で行なえるトレーニングやADL 練習や社会参加のための取り組みに重点を置いたものとした。また,契約者数の増加に合わせて17 名への定員の増大や土曜日の営業も行なう想定とした。</p><p>【倫理】</p><p>今回の発表にあたり特に開示すべきCOI 関係はなく,利用者及び依頼者における守秘義務も間題ない。</p><p>【結果】</p><p>稼働率は開設1 ヶ月で約30%,2 ヶ月で約50% であり,現事業規模の経営面の指標としては損益分岐点にひとまず達する見込みである。近隣の居宅介護支援所や地域包括からの問い合わせも増えてきている印象である。</p><p>【考察】</p><p>現段階で開設2 ヶ月であるが,概ね順調な流れであると考えている。ここに対し外的と内的の2 つの視点で要因を整理する。外的環境では今回の開設は都市部のため競合としてリハビリ特化型デイは既に数店舗あるのだが,理学療法士が在籍しているとなるとまだまだ少ないということがあった。また,デイケアも含めて多くはフランチャイズや医療法人主体の大規模の事業所であり,マシーン主体が多い。小規模で密な関わりが差別化に働いたと考えられる。内的な経営資源としては依頼主が訪間リハビリ及び訪間看護事業に従事しており,生活期リハの理解があることや,店舗は活動していたエリアで開設し,ケアマネジャーや他事業所との既存の関係性を活かせたこと。また,コンセプトを決め,対象者を絞った事で分かりやすいサービス像が形成され,実際の見学や紹介に繋がったのではないかと考える。</p><p>【結論】</p><p>新規開設の通所事業において理学療法士が地域に出ていくニーズはまだまだ大きいと言える。ただ,「なぜやるのか。」の想いは大事で,リハビリテーションの本質だが,デイサービスを含む介護保険事業の運営が昨今の改定で難しくなっているのも事実である。そのため運営には高齢者数や地域のニーズなどの外的環境と,開設主体の関連サービスやスタッフの能力などの内的な経営資源を見直した後に,コンセプトの制定を行うといった戦略的要素が継続可能な事業の実現には欠かせないのではないだろうか。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), D-66-D-66, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564238110817280
  • NII論文ID
    130007692866
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.d-66
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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