地域在住高齢者における精神・認知機能とサルコペニアとの関連

DOI

抄録

<p>【はじめに・目的】</p><p>サルコペニアは加齢に伴う筋量や筋力の低下を特徴とする症候群であり,その改善や予防の対策は理学療法の重要な対象となる。近年,高齢者の認知・精神機能がサルコペニアに影響することが注目されているが,軽度認知機能低下(MCI)と抑うつ傾向について高齢者のサルコペニアとの関連性は未だ明らかではない。本研究は,横断的な調査を行い,MCIおよび抑うつ傾向とサルコペニアとの関連性を検討することを目的とした。</p><p> </p><p>【方法】</p><p>垂水研究2017に参加した地域在住高齢者380名のうち,認知症やうつ病の既往歴がある者,測定項目に欠損がある者を除く65歳以上の350 名(女性263名)を分析対象とした。Body mass index(BMI),四肢骨格筋量 (生体電気インピーダンス法),握力,通常歩行速度,National Center for Geriatrics and Gerontology functional assessment tool(NCGG-FAT),Geriatric depression scale 15 (GDS-15)により,身体・精神・認知機能を評価し,病歴や教育年数などの基本属性を聴取した。また,骨格筋量はAppendicular Skeletal Muscle Mass Index (ASMI) (kg/m2) を算出し,Asian Working Group for Sarcopenia のアルゴリズムに従い,ASMI,歩行速度,握力の参照値からサルコペニアを定義した。NCGG-FATで年齢と教育歴を考慮した標準値より1.5SD以上の低下を認めた者をMCIとし,GDS-15が6点以上の者を抑うつ傾向とした。統計解析は,サルコペニア該当者と非該当者の2群に分け,カイ二乗検定およびロジスティック回帰分析を行い,MCIおよび抑うつ傾向とサルコペニアとの関係を調べた。有意水準は5% 未満とした。</p><p> </p><p>【結果】</p><p>サルコペニア該当者77名(22%),非該当者273名(78%)であった。サルコペニアの有無を従属変数として,年齢,教育年数,BMI,MCI,抑うつ傾向を独立変数としたロジスティック回帰分析(強制投入法)の結果,MCI(OR 2.72,95%CI 1.48-4.99,p=0.001)と抑うつ傾向(OR 2.54,95%CI 1.19-5.43,p=0.016)のいずれともに,サルコペニアと有意に関連していた。</p><p> </p><p>【結論】</p><p>本研究による横断的な分析の結果,MCIと抑うつ傾向はいずれともサルコペニアと関連があることが示唆された。この結果は,サルコペニアの予防戦略を検討する上で,認知機能や抑うつの評価を行う重要性を示していると考える。今後は,これらの関連性が将来的なサルコペニアの発生,要介護状態にどのように影響するのか縦断的に調査する必要がある。</p><p> </p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は,鹿児島大学大学院医歯学総合研究科疫学研究等倫理委員会の承認を得て実施した。発表に関連し,開示すべき利益相反関係にある企業などはない。また,対象者には書面と口頭にて研究の目的・趣旨を十分に説明し,研究に対する参加の同意を得た。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), G-96_2-G-96_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564238110874624
  • NII論文ID
    130007693546
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.g-96_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ