側方リーチにおける骨盤側方傾斜角と重心移動速度について
書誌事項
- タイトル別名
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- -座位姿勢アライメントに着目して-
抄録
<p>【はじめに】 理学療法において体幹筋を促通するために座位で側方リーチ(以下:SR)を行うことが多いが,姿勢アライメントの影響についてはあまり分かっていない.我々はこれまで,理想的な座位姿勢(アップライト座位:以下U座位)と脊柱後弯姿勢(スランプ座位:以下S座位)でのSRを比較し,U座位において,重心移動距離と骨盤側方傾斜角(以下:骨盤角)の有意な相関関係を明らかにした.しかし,骨盤角の大きさや側方への重心移動速度(以下:GV)については検討していない.そこで座位姿勢アライメントの違いが,骨盤角とGVに及ぼす影響を比較した.</p><p>【方法】 対象は,健常男性12名(平均年齢20.1±1.0歳)とした.測定肢位は足底非接地での端座位とし,U座位は骨盤直立位,S座位は骨盤最大後傾位とした.運動は利き手側の右側方への最大リーチとし,開始肢位から姿勢保持が可能な範囲でSRを行わせ,動作中の重心移動距離と骨盤角を測定した.重心移動距離はバランス wii board®(任天堂製)を用いて測定した.骨盤角は,前方からビデオで記録し,重心移動距離の25%位置,50%位置,75%位置,最大位置における両上前腸骨棘を結ぶ線と座面の角度を,それぞれ画像解析ソフトimageJにて解析した.GVは,重心移動距離の0%~25%区間,25%~50%区間,50%~75%区間,75%~最大位置区間(それぞれ以下:1区,2区,3区,4区)における移動時間と移動距離から算出した.統計手法は,骨盤角とGVにおいて,座位姿勢と重心移動距離の2要因における反復測定二元配置分散分析およびBonferroniの多重比較検定を用いて,U座位とS座位におけるそれぞれの値を比較検討した.危険率は5%とした.</p><p>【結果】 骨盤角(単位°)は,U座位では25%位置で11.7±5.5,50%位置で17.0±5.5,75%位置で22.2±7.4,最大位置で27.1±7.3,S座位では順に8.6±3.7,13.6±6.2,20.1±7.5,23.3±8.3となった.分散分析の結果,座位姿勢と重心移動距離に有意な主効果があり,多重比較の結果,重心移動距離に比例して骨盤角は有意に大きくなった.GV(単位cm/s)は,U座位では1区で1.7±1.0,2区で1.9±1.0,3区で1.8±0.9,4区で1.0±0.6,S位では順に2.3±2.8,2.0±1.3,2.0±1.4,1.2±0.9となった.分散分析の結果,重心移動距離において有意な主効果があり,多重比較の結果,1区,2区,3区それぞれが4区よりも有意に速かった.しかし,座位姿勢における有意な主効果は認められなかった.</p><p>【結論】U座位はS座位に比べ,各重心移動時期において骨盤角が大きいことが分かり,GVは座位姿勢に関わらず,4区よりもその他の時期が速いことが分かった.先行研究から,U座位ではS座位に比べ,重心移動距離も大きいことが分かっている。今回の結果からGVに座位姿勢の違いによる影響がないことから,U座位ではS座位よりも,長い間,側方傾斜姿勢を保っていることが示唆された.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,大阪電気通信大学における生体を対象とする研究及び教育に関する倫理委員会による承認を受けた研究の一部であり,対象者の個人情報は,本研究にのみ使用し個人が特定できるような使用方法はしないことや研究の趣旨などの説明を書面および口頭にて十分に行った上で,本研究への参加について対象者から同意の署名を得た.また被験者には研究中であっても不利益を受けることなく,同意を撤回することが出来ることを説明した.(承認番号:生倫認14-007号)</p>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 46S1 (0), H2-211_2-H2-211_2, 2019
公益社団法人 日本理学療法士協会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390564238110898176
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- NII論文ID
- 130007693780
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可