書誌事項
- タイトル別名
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- Observation of Higgs Amplitude Mode in s-wave Superconductors Induced by Nonadiabatic Terahertz Pulse Excitation(Research)
- テラヘルツパルスを用いたs波超伝導体のヒッグスモードの観測
- テラヘルツパルス オ モチイタ sハ チョウデンドウタイ ノ ヒッグスモード ノ カンソク
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抄録
超伝導転移の本質は,ゲージ対称性の自発的な破れ,つまり電子系の波動関数の位相が巨視的なスケールで揃う点にある.「対称性の自発的破れ」といえば南部理論だが,その発端には超伝導の微視的理論であるBCS理論が深く関わっている.対称性が自発的に破れると,秩序変数の位相と振幅のそれぞれの揺らぎに対応する2種類の集団励起モードが現れる.位相モードはエネルギーギャップを持たない,粒子描像で言えば質量ゼロのモードであり,南部-ゴールドストーン(NG)ボソンと呼ばれる.素粒子でNGボソンが観測されなかったことから,NGボソンの自由度が弱い相互作用のゲージボソンに「吸収」され,その質量として繰り込まれるというヒッグス機構が提唱された.一方,振幅モードは,ワインボトル型ポテンシャルの底を昇るような,波数ゼロでも有限エネルギーの(質量を持つ)振動モードである.自発的にゲージ対称性の破れた真空における振幅モードに相当するものがいわゆるヒッグス粒子であり,このアナロジーから近年では一般に振幅モードはヒッグスモードとも呼ばれている.では超伝導ではこれらの集団モードはどのように現れるのだろうか.電子間に働く長距離クーロン力によってNGモードの自由度は失われてゲージボソン(光子)の横波成分に質量が生じることをアンダーソンが示しており,これは磁場の侵入を有限距離しか許さないマイスナー効果に対応している.一方,ヒッグスモードは,電荷密度波と共存するなどの特殊な条件下を除いて観測されていなかった.超伝導のヒッグスモードを励起するには,つまり秩序変数の振幅を揺らすにはどうすればよいだろうか.一つの方法は,秩序変数の大きさを「瞬間的に」変化させて,ポテンシャル曲面の底を動かすことである.冷却原子系では,磁場によって原子間相互作用を制御する技術が進展し,このような手法による観測が可能になってきた.固体電子系ではこれはなかなか困難であるが,超短光パルスを用いて瞬時にクーパー対を壊し自由な準粒子を大量に作り出すことで同様の操作を行うことができると考えられる.ただしこのとき,光子エネルギーが高すぎると格子系まで加熱してしまい都合が悪い.そのため,超伝導ギャップぎりぎりのエネルギー(典型的にはテラヘルツ(THz)周波数帯)で励起する必要がある.本稿では,THzパルスを用いたポンプ-プローブ分光測定によって,s波超伝導体Nb_<1-x>Ti_xNにおけるヒッグスモードの実時間観測に成功した我々の最近の研究について解説する.高強度モノサイクルTHzパルスを照射することで,瞬時にBCS基底状態を強く励起する状況を実現し,誘発された秩序変数の振動,つまりヒッグスモードを,プローブTHzパルスを用いて超伝導ギャップ周波数近傍の電磁応答の観測から捉えることに成功した.振動の周波数は,理論的に予想されるように超伝導ギャップエネルギーの逆数と見事に一致した.凝縮系におけるヒッグスモードの実時間観測は,基底状態の性質のより深い理解と,集団励起の緩和過程など系によらない普遍的な物理の探求に繋がることが期待される.p波,d波超伝導体ではどうなるかなど興味は尽きない.超伝導体の秩序変数を外場によって自在にかつ超高速にコヒーレント制御する技術は基礎応用両面でも大変興味深い.制御されたAC光外場の駆動によって生じた非平衡状態では,基底状態では生じえない新たな物性が発現する可能性を秘めており,今後実験・理論の両面で研究が大きく進展することが期待される.
収録刊行物
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- 日本物理学会誌
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日本物理学会誌 69 (7), 453-458, 2014-07-05
一般社団法人 日本物理学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390564238111131520
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- NII論文ID
- 110009830627
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- NII書誌ID
- AN00196952
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- ISSN
- 24238872
- 00290181
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- NDL書誌ID
- 025553121
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- NDL
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可