咳嗽力改善プログラム継続に関連する地域在住高齢者の呼吸機能特性

DOI
  • 鈴木 あかり
    国際医療福祉大学 福岡保健医療学部 理学療法学科
  • 金子 秀雄
    国際医療福祉大学 福岡保健医療学部 理学療法学科

抄録

<p>【はじめに、目的】咳嗽時最大呼気流量(CPF)の低下は肺炎発症に関連するリスク因子である.我々は先行研究にて,高齢者のCPF改善を目的とした咳嗽力改善プログラム(以下,プログラム)の長期効果を報告した.しかし,1カ月以降のプログラム継続指導に対して実施しなかった対象者は少なくない.その対象者の身体特性に違いがあれば,プログラムの適応を検討する一助となることが期待できる.そこで本研究では,プログラム継続の有無による対象者の特性および1カ月間の介入効果について検討した.</p><p>【方法】対象は地域在住で歩行が自立した65歳以上の高齢者32名(平均年齢76±6歳,男性10名)とした.神経疾患,心疾患がある者,閉塞性換気障害(1秒率<70%),口腔嚥下障害がある者は除外した.プログラムはハーフカットポール上背臥位(5分間/日),最大呼気圧(MEP)の30~50%の呼気抵抗負荷での呼気筋トレーニング(25回/日),咳嗽力(CPF)の確認(数回)からなり,自宅にて週5回以上,4週間行うように指導した.1カ月以降は最低週1回プログラムを継続するよう指導し,6カ月後に1カ月以降の実施状況を確認した.介入前後にCPF,呼吸機能として努力性肺活量,最大吸気圧(MIP),MEP,胸腹部可動性を先行研究および各ガイドラインに準じて測定した.胸腹部可動性は呼吸運動測定器にて上部胸郭,下部胸郭,腹部における呼吸運動の大きさを測定し,それぞれ呼吸運動評価スケール(0~8)で表した.また,介入前に運動機能評価として30秒椅子立ち上がりテストおよびTimed up and go testを実施した.対象者32名のうち,1カ月間のすべてのプログラムを実施した21名を分析対象とし,1カ月以降もプログラムを週1回以上継続した群(継続群12名)と継続しなかった群(非継続群9名)に分けた.介入前の基本属性,CPF,呼吸機能,運動機能における2群の比較に対応のないt検定またはMann-Whitneyの検定を用いた.また,プログラムの効果を2群で比較するため,各群,CPFと呼吸機能における介入前後の比較に,t検定またはWilcoxonの符号付順位検定を用いた.</p><p>【結果】介入前の測定項目を2群で比較した結果,非継続群の下部胸郭スケール値は継続群より有意に大きかった(継続群:中央値3,非継続群:中央値4).なお,非継続群の下部胸郭スケール中央値は4(正常範囲下限値)と正常範囲であった.その他の測定項目に有意差はなかった.1カ月間の介入により,継続群のCPFは有意に増大したが,非継続群に有意差は認められず,MIPと腹部スケール値が有意に増大した.</p><p>【結論】非継続群の下部胸郭可動性は継続群より高く,正常範囲にあることがわかった.CPF改善を目的としたプログラムは下部胸郭可動性低下のある地域在住高齢者に効果的である可能性が考えられる.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究は所属施設の倫理審査委員会の承認(承認番号:14-Ig-21)を得た後に実施し,すべての対象者に対して研究内容を口頭と書面にて十分に説明し同意を得た.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), C-104_1-C-104_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564238111179648
  • NII論文ID
    130007692609
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.c-104_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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