地域在住高齢者の骨密度に近隣環境は影響を与えるのか

  • 代田 武大
    北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科理学療法学専攻
  • 上出 直人
    北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科理学療法学専攻
  • 坂本 美喜
    北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科理学療法学専攻
  • 佐藤 春彦
    北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科理学療法学専攻
  • 柴 喜崇
    北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科理学療法学専攻 桜美林大学老年学総合研究所

書誌事項

タイトル別名
  • チイキ ザイジュウ コウレイシャ ノ コツミツド ニ キンリン カンキョウ ワ エイキョウ オ アタエル ノ カ

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抄録

<p>【はじめに、目的】 近年,近隣環境と地域在住者の身体機能の関連性が報告されている.自宅から幹線道路までの距離が近いほど認知症発症リスクが増加する(Chen H,2017)ことや近隣に歩道が整備されている環境,商業施設へアクセスしやすい等の環境と身体活動量が高いことに関連が認められることが報告されている(Inoue S,2011).これらの先行研究から近隣環境は地域在住者の健康に影響を与える要因の一つであると認識され始めている.一方で,我が国では骨粗鬆症患者数は増加しており,重要な課題と言える.近隣環境と地域在住者の健康に関連が認められると報告されている現在,医学的な背景に加え環境因子も考慮すべきである.本研究の目的は,地域在住高齢者の1年間の骨密度の変化量と近隣環境の関連を調査することである.</p><p>【方法】 対象者は,A市Bセンターで開催された体力測定会(2016年9月)に参加した要支援・要介護認定を受けていない65歳以上の地域在住高齢者212名の内,1年後(2017年9月)の体力測定会に参加した者,121名(平均年齢 71.9±4.1歳)を解析対象者とした.自記式アンケートにより,年齢,身長,体重,主観的健康感,抑うつ評価,近隣環境評価:International Physical Activity Questionnaire Environmental Module(IPAQ-E)を調査した.IPAQ-Eの項目は①居住密度,②近隣のスーパーや商店街の数,③近隣の歩道の有無,④近隣の運動場所の有無,⑤近隣の交通量,⑥近隣の運動実施者の有無,⑦近隣の景観の良さである.これらの回答は先行研究(Inoue S,2009)を基に2群に分け解析に用いた.従属変数として骨密度の変化量(ベースライン及びフォローアップの測定値の差)を調査した.骨密度は, 超音波骨密度測定装置:Quantitative Ultrasound(QUS)を用いて,踵骨の超音波伝播速度:Speed of Sound(SOS)を測定した. 薬による影響を除くために,骨密度へ影響を与える可能性がある薬を服用している群と服用していない群に分けて分析した. 解析方法はIPAQ-E,主観的健康感,抑うつ評価,性別,服薬状況については対応のないt検定を用い,年齢,身長,体重,BMIについてはPearson の相関係数を用いて,骨密度の変化量と有意に関連する変数を分析した.</p><p>【結果】 居住密度が高い群(n=40)の方が,居住密度が低い群(n=81)よりも有意に骨密度が上昇(11.8±9.5m/sec)していた(p=0.00).服薬状況及びその他の項目については有意差を認めなかった.</p><p>【結論】 地域在住高齢者において,居住密度が高い場所に居住していることが骨密度を有意に上昇させる要因の1つであることが推察された.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】 対象者には,本研究の目的,内容,個人情報の取り扱いについて口頭及び書面にて説明し,署名による同意を得た.また本研究内容及び研究手順は北里大学医療衛生学部研究倫理審査委員会によって承認されたものである.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), C-76_1-C-76_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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