地域在住高齢者における5回椅子立ち上がりテストを用いた等尺性膝伸展筋力の推定式の作成
説明
<p>【はじめに、目的】</p><p>等尺性膝伸展筋力は,一般的にHand Held Dynamometer(以下,HHD)を用いて測定される.しかし,地域や在宅では,HHDを用いた測定が必ずしも可能ではない場合もある.一方,特別な道具を使用せずに測定可能な5回椅子立ち上がりテスト(Five-time sit-to-stand test:FTSST)は,等尺性膝伸展筋力と関連性が高いことが報告されている.本研究では,地域在住高齢者を対象に,FTSSTの測定結果からHHDを用いずに等尺性膝伸展筋力を評価できる推定式を作成し,さらに推定式による膝伸展筋力推定値の妥当性を検証した.</p><p>【方法】</p><p>65歳以上で要介護認定のない地域在住高齢者512名を対象とした(男性135名,女性377名,平均年齢71.4±4.6歳).なお,認知症の疑いがある,膝関節に著しい疼痛がある,ペースメーカーおよび人工関節の手術歴がある場合は対象から除外した.対象者には,HHDによる等尺性膝伸展筋力およびFTSSTを測定した.また,生体インピーダンス法にて四肢筋量を測定した.四肢筋量はAsian Working Group for Sarcopenia(2014)の基準に従って,筋量低下の有無を判定した.その他,基本属性として,年齢,性別,身長,体重,既往歴、服薬状況,疼痛,転倒歴,老研式活動能力指標を調査した.統計学的解析として,等尺性膝伸展筋力を従属変数,FTSSTおよびその他の交絡因子を独立変数としたステップワイズ法重回帰分析を行い,等尺性膝伸展筋力の推定式を作成した.次に,等尺性膝伸展筋力について,HHDによる測定値と推定式による推定値の両者における,筋量低下の有無に対する識別能力をReceiver Operating Characteristic(ROC)曲線を用いて比較検討した.なお,統計学的有意水準は5%とした.</p><p>【結果】</p><p>等尺性膝伸展筋力とFTSSTの単相関係数は-0.274(p<0.001)であった.FTSSTに加えて,等尺性膝伸展筋力と有意な関連が認められた変数でステップワイズ法重回帰分析を行った結果,FTSST・年齢・性別・体重による推定式が得られた(R2=0.342).筋量低下の識別能力については,HHDによる膝伸展筋力では曲線下面積(AUC)=0.692,推定式による膝伸展筋力ではAUC=0.716で,両者のAUCに統計学的差はなかった(p=0.43).</p><p>【結論】</p><p>本研究の結果,FTSSTと年齢・性別・体重の情報からHHDを使用せずに簡便に等尺性膝伸展筋力を推定する式を作成することができた.さらに,四肢筋量低下の識別能力については,推定式による等尺性膝伸展筋力とHHDによる実測値とは同等であり,推定式による結果には併存的妥当性があると考えられた.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>全対象者に,研究の目的,内容,個人情報の取り扱い等について口頭及び書面にて説明し,書面による同意を得た.また、本研究は北里大学医療衛生学部研究倫理委員会の承認を得て実施したものである(承認番号2016-G021B).</p>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 46S1 (0), C-79_2-C-79_2, 2019
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390564238111187968
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- NII論文ID
- 130007692791
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可