脳卒中片麻痺患者に対する足関節背屈ストレッチ中の上肢サイクリング付与が麻痺側下腿三頭筋のスティフネスに与える効果

DOI
  • 越智 亮
    星城大学リハビリテーション学部 医療法人和光会 山田病院リハビリテーション科
  • 福本 将久
    医療法人和光会 山田病院リハビリテーション科
  • 高見 亮介
    医療法人和光会 介護老人保健施設 寺田ガーデン
  • 大古 拓史
    星城大学リハビリテーション学部
  • 林 尊弘
    星城大学リハビリテーション学部
  • 山田 和政
    星城大学リハビリテーション学部 医療法人和光会 山田病院リハビリテーション科

抄録

<p>【はじめに・目的】</p><p>脳卒中片麻痺患者に対する麻痺側の下腿三頭筋ストレッチは,足関節背屈の最大関節可動域(以下,ROM)や,受動的な背屈に対する足関節底屈筋の抵抗力(以下,スティフネス)を改善するとされている.脳卒中患者において,上肢サイクリング中に下肢のヒラメ筋H反射が減少することが明らかにされている.H反射は運動ニューロンプールの興奮性を反映するため,ストレッチ中の上肢サイクリングは下腿三頭筋の痙縮を抑制させて,ストレッチによる筋の伸長効果をより高めるかもしれない.本研究の目的は,上肢サイクリング併用の下腿三頭筋ストレッチが上肢安静のストレッチと比べて,ROMとスティフネスをより改善させるかどうか確かめることである.</p><p>【方法】</p><p>9名の歩行が自立した脳卒中片麻痺患者(男性5名,年齢61.1±11.8歳,BMI 23.0±17 kg/m2,足関節背屈modified Ashworth scaleが1~2)を対象とした.起立斜面台と足関節矯正板を用いた10分間の足関節背屈ストレッチ(以下,USS)条件と,それに毎分60回転のアシスト付き上肢サイクリングを10分間加えた(以下,AAC)条件の2条件を1日1条件,2日ずつランダムに計4日で実施させた.対象者の下腿の伸張感を基に矯正板の背屈角度を設定した.上肢サイクリングについて,対象者になるべく自発的に実施するよう要求した.各条件の実施前後に麻痺側のROM(deg)と,足関節背屈角度3,6,9,12°における足関節底屈筋の受動トルクを,特別製作した受動トルク測定器で3回ずつ測定した(同測定器については,越智亮,他,特別製作した受動トルク計測器で得られた下腿三頭筋スティフネスの妥当性と再現性の検証.理学療法科学, 2018. in pressを参照).得られた4つの角度―トルク関係から回帰直線を求め,その傾きをスティフネス(Nm/rad)とした.統計学的検討として,各条件の実施前後の比較を行った.AACとUSSともに実施前後の変化率(1日目と2日目を平均した)を求め,条件間比較を行った.</p><p>【結果】</p><p>例として,USS1日目とAAC1日目の実施前のROMは,18.1 ± 2.6°,18.3 ± 3.0°,スティフネスは,49.9 ± 15.9 Nm/rad,51.6 ± 17.6 Nm/radであった(実施前のROMとスティフネスは両条件間,日間で有意差なし).AAC,USSともに実施後に有意にROMが増加し(p< 0.01),スティフネスは有意に減少した(p< 0.01).条件間比較の結果,スティフネスの変化率はUSSが-7.9±8.1 %,AACが-16.8±4.1 %で,AACがUSSよりも有意に大きい変化率であった(p< 0.05).ROMはUSSが10.3±5.2 %,AACが11.4±5.6 %で有意差はなかった.</p><p>【考察】</p><p>上肢サイクリングを加えた足関節背屈ストレッチは上肢安静の通常のストレッチと比べて脳卒中患者の麻痺側下腿三頭筋スティフネスを効果的に減少させることを示唆する.最大ROMは対象者の筋の伸張感を基に決定したため,痛みの耐性の変化などでスティフネスと関連しなかった可能性が考えられた.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は,星城大学研究倫理委員会の承認を経て実施された(承認番号;2016C0029,情報公開URL;http://www.seijoh-u.ac.jp/guide/f90a820f25c7d5b6642678bbcbea3430c26f94c0.pdf).研究対象者には,十分な説明を行い,全対象者から書面による同意を得た.本研究によって生じる可能性のある対象者への不利益や危険性として,研究実施中の筋損傷,筋疲労,肩の痛みなどが挙げられる.これらに対して,検査者が痛みや違和感を常に聴取するなどして対応した.また万が一,対象者に受診費や治療費が発生した場合は研究代表者の理学療法士賠償責任保険で対応することとしていた.本研究実施中に上記の不利益が対象者に及ぶことはなかった.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), E-124_2-E-124_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564238111202944
  • NII論文ID
    130007692955
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.e-124_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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