市販の活動量計を用いた在宅脊髄損傷者の活動量の検証
抄録
<p>【はじめに・目的】褥瘡は脊髄損傷者の合併症として発生率が高い。予防のために様々な取り組みが行われており、その中の一つに活動性が高いと褥瘡発生が少ないという報告がある。しかし車椅子を利用して生活する脊髄損傷者の活動量を定量的に計測する方法や、どのような場面で活動量が高くなるか明確ではない。本研究の目的は市販の活動量計を用いて車椅子を利用して生活している脊髄損傷者の活動量を定量化することと、活動量高い場面を特定することである。</p><p>【方法】研究1では健常者1名を対象として活動量計(オムロン社製 ActiveStylePro HJA-750C)とウェアラブル(装着型)呼吸代謝計測装置(コスメデ社製 K4-b2、以下呼吸代謝計測装置)を同時に装着して2種類の車椅子駆動(快適駆動、20kg負荷駆動)を6分間実施し、各計測器でのMETs(メッツ)を比較した。活動量計の取り付け位置は下衣ベルトと胸骨柄の2パターンとした。研究2では在宅で生活し就労している脊髄損傷者5名を対象に駆動距離と活動量を計測した。車椅子にサイクルメーター(キャットアイ社製 VELO9 CC-VL820)を取り付け、下衣ベルト部分に活動量計を装着した。計測は対象者の都合によって3から6日間行った。計測時間は起床後車椅子に乗車時から夕食後までを必須とした。また対象者には生活パターンを記録紙に記録してもらった。統計処理は研究1では活動量計と呼吸代謝計測装置のMETsに対して対応のないt検定を行い、研究2では駆動距離とエクササイズの相関係数を算出した。また生活記録から屋内と屋外で過ごした時間を算出し、活動量計で記録された平均METsに対して対応のあるt検定を行った。</p><p>【結果】活動量計を下衣ベルトに取り付けた時の快適走行のMETsは活動量計2.05±0.28(平均±標準偏差、以下同様)、呼吸代謝計測装置4.12±1.28、20kg負荷では活動量計1.89±0.41、呼吸代謝計測装置4.47±0.75だった。活動量計を胸骨柄に取り付けた時の快適走行のMETsは活動量計3.11±0.32、呼吸代謝計測装置4.49±1.00、20kg負荷は活動量計2.84±0.52、呼吸代謝計測装置5.29±0.98だった。それぞれ計測器間で有意差を認めた。研究2では17データを収集し、駆動距離は2.40±1.85(km)、エクササイズは0.95±0.45で有意な相関を認めた(p=0.017、r=0.566)。屋内と屋外を過ごした時間を算出できたのは10データで、METsは、屋内0.74±0.41、屋外1.40±0.28で有意差を認めた。</p><p>【結論】研究1では活動量と呼吸代謝計測装置の間でMETsが異なっていたことから、車椅子利用者では今回使用した活動量計では絶対値で活動量を定量化するよりも、相対的に活動量の目安として活用すべきであることが示唆された。研究2では駆動距離とエクササイズの間には有意な相関を認めた。活動量計で計測されたMETsは屋内に比べて屋外において有意に大きかったことから、外出が活動量向上に寄与する可能性が示唆された。本研究はJSPS科研費17H00721の助成を受けた。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に則って実施された。また神奈川リハビリテーション病院倫理委員会の承認を得(承認番号:krh-2017-4)、被験者には書面と口頭で説明し同意を得た。</p>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 46S1 (0), G-136_1-G-136_1, 2019
公益社団法人 日本理学療法士協会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390564238111247104
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- NII論文ID
- 130007693395
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可