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TKA術後患者に発生した膝関節他動屈曲時の膝窩部痛に対し理学療法を提供した一症例
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- 佐伯 秀宣
- 医療法人 財団 共済会 清水病院
Description
<p>【症例紹介】</p><p>臨床において膝関節他動屈曲時に膝窩部痛が生じることがある。その疼痛発生源の特定も重要ではあるが、疼痛発生原因を仮説検証し、その結果得られた原因への対応が必要となってくる。今回は、左変形性膝関節症に対し左人工膝関節全置換術を施行した症例に発生した膝関節他動最終屈曲可動時に出現した膝窩部痛に対し理学療法を提供し、症状の改善に至ったので報告する。</p><p> 症例は、平成29年12月に左変形性膝関節症に対し左人工膝関節全置換術を施行した70歳代後半の女性である。しゃがみ込み動作で左膝前面痛が出現していたが、杖歩行獲得以降のしゃがみ込み動作で左膝窩部痛が出現するようになった。左膝関節他動屈曲時に左膝窩部に同様な疼痛が出現した。しゃがみ込み動作以外で同様な疼痛が出現することは無かった。この疼痛の軽減を目的に理学療法を開始した。</p><p>【評価とリーズニング】</p><p>画像所見等の医学的情報や主観的評価により中枢性神経障害性疼痛の可能性、red flagを疑う所見・エピソードは無かった。疼痛発生部位が膝窩部外側という限局した部位であり、感覚異常等が確認されなかったことから、主たる仮説としては大腿骨に対する脛骨の異常運動に伴う膝窩部組織へのメカニカルストレスによる侵害受容性疼痛と判断した。</p><p> 理学療法評価は左膝関節最終屈曲可動範囲のみで、NRSが5程度の疼痛が出現することから、その範囲での検査は極力実施しないことにした。また、しゃがみ込み動作以外では疼痛が出現しないことから疼痛の過敏性は低いと判断し、その他の検査等は制限なく実施した。</p><p> 脛骨の異常運動により疼痛は誘発されていると仮説を立て、脛骨の運動に関係する可能性のある要因を、フレームワークを作成し順に検証作業を行った。その結果、残存PCLの機能破綻、膝蓋骨の脛骨方向への移動量の低下が脛骨の異常運動の要因であると判断した。次いで膝蓋骨の脛骨方向への移動量の低下の要因を、フレームワークを作成し順に検証作業を行った。その結果、手術侵襲に伴う各組織間の癒着と大腿四頭筋の過緊張が要因であると判断した。また大腿四頭筋の過緊張が、各基本動作で誘発されている可能性の有無を動作観察にて評価した。その結果、歩行時立脚期、寝返り動作において大腿四頭筋の過活動を確認した。歩行観察では、左下肢SKGを確認した。左下肢SKGの可能性のある要因を、フレームワークを作成し順に検証作業を行った。その結果、左下肢立脚期中期の膝伸展角度不足、左大腿四頭筋の過緊張、左膝関節他動屈曲時の速度への適応不足、左足部底屈機能の低下が要因であると判断した。</p><p> 上記の評価結果から、残存PCLの機能破綻の改善は理学療法の適応外とし、それ以外である大腿四頭筋の過活動をもたらしている歩行動作を中心とした基本動作の修正、膝蓋骨の可動制限に対しては理学療法の適応と判断し介入開始とした。</p><p>【介入内容および結果】</p><p>安静度は、増悪因子がしゃがみ込み動作のような左膝関節を屈曲する動作のため、その増悪動作に制限をかけた。手術侵襲に伴う各組織間の癒着に対してはマニュピレーション、関節モビライゼーションを実施し、膝蓋骨の可動範囲の増大を図った。そして膝蓋骨の運動を誘導しながらの膝関節屈曲運動を実施した。SKGに対しては、まず左膝伸展可動域の改善を図り、その後に左膝伸展筋の筋機能の改善を図り、伸展筋の筋機能改善に合わせて左足部底屈機能の改善を図る流れで介入を行った。左膝関節伸展可動域制限に対してはマニュピレーション、ストレッチを実施した。膝伸展筋機能に関しては、recruitment等の神経系要素の改善、収縮力のみではなく収縮後の弛緩を意識したもの、速度に対応した筋の伸張の改善を図った。基本的には1日2単位~3単位の理学療法を実施した。その結果、膝蓋骨の可動性の改善が図られ、膝窩部痛の改善に至った。</p><p>【結論】</p><p>膝窩部痛発生原因の抽出を身体機能的側面のみならず、運動動作的側面からも原因を抽出し理学療法プログラムを立案し介入を行った。動作方法によっては、問題を生みだす可能性があり、ただ動作ができることを求めるのではなく、最適な動作方法の習得が必要である。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>理学療法の介入内容に関しては、介入前に方向性、内容を説明し同意を得て介入開始とした。また本症例報告に対する説明を行い、同意を得た。</p>
Journal
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- Congress of the Japanese Physical Therapy Association
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Congress of the Japanese Physical Therapy Association 46S1 (0), H2-104_2-H2-104_2, 2019
Japanese Physical Therapy Association(Renamed Japanese Society of Physical Therapy)
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390564238111256064
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- NII Article ID
- 130007693560
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
- Disallowed