座位姿勢が上肢挙上時の肩関節および脊柱動態に及ぼす影響
説明
<p>【はじめに、目的】</p><p>肩関節疾患患者に対する理学療法評価において,上肢挙上時の肩甲骨運動評価を実施する機会は多い.しかし,評価時の姿勢に関する定義はなく,立位やリラックス座位,骨盤・腰椎アップライト座位 (アップライト座位) などセラピストによって評価姿勢は異なる.臨床上,上肢挙上時痛を有する患者において,評価姿勢を変化させることで痛みの程度が変化することをしばしば経験することからも,姿勢の変化により肩関節や脊柱の動作戦略が異なることが予想されるが,その詳細は明らかになっていない.そこで本研究では,リラックス座位とアップライト座位の間で上肢挙上時の肩関節および脊柱動態にどのような差異が存在するのかを調査した.</p><p>【方法】</p><p>対象は,肩関節および脊柱に整形外科的既往のない健常男性19名とした.運動課題は両上肢同時の前方挙上とし,リラックス座位とアップライト座位の2条件で計測した.運動学的データの収集および解析はカメラ6台からなる光学式三次元動作解析装置,NEXUS 2.7およびBodybuilder3.6を用いた.検討項目は右側の肩甲上腕関節挙上角,肩甲骨上方回旋角,後傾角,および上部胸椎伸展角,下部胸椎伸展角,腰椎伸展角,骨盤後傾角とした.上肢挙上20°から120°を解析区間とし挙上10°毎の各項目の角度変化を2条件間で比較した.統計学的解析には二元配置分散分析およびBonferroniの多重比較検定を用いた.</p><p>【結果】</p><p>肩甲骨後傾角,上部胸椎伸展角,腰椎伸展角において姿勢と上肢挙上角の間の有意な交互作用効果を認めた (各々p<0.01, p<0.05, p<0.05).肩甲骨後傾角は上肢挙上40°から60°においてリラックス座位が有意に低値を示し(p<0.05),挙上100°から120°においては有意に高値を示した(p<0.05).上部胸椎伸展角において,リラックス座位は挙上20°時と比較し有意な角度変化が生じるのは60°からであったのに対し,アップライト座位は有意な角度変化は90°から生じていた.腰椎伸展角において,リラックス座位は挙上20°時とその他の挙上角度に有意な角度の差を認めなかったのに対し,アップライト座位は挙上20°時と比較し挙上40°で有意な伸展角度の増大が生じた.肩甲上腕関節挙上角,肩甲骨上方回旋角,下部胸椎伸展角,骨盤後傾角においては有意な交互作用効果を認めなかった.</p><p>【考察】</p><p>本研究の結果,リラックス座位とアップライト座位の間で上肢挙上時の肩甲骨後傾,上部胸椎伸展および腰椎伸展の運動パターンが異なることが明らかとなった.リッラクス座位における骨盤後傾の増大,腰椎前弯の減少,下部胸椎後弯の増大が上肢挙上時の代償的な上部胸椎伸展運動の早期出現と運動性増大および挙上100°以降の肩甲骨後傾運動の増大を生じさせると推察される.</p><p>【結論】</p><p>座位姿勢の違いにより上肢挙上時の肩関節および脊柱動態に変化が生じることを念頭に置き,臨床評価を行う必要がある.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は,福岡リハビリテーション専門学校倫理委員会に承認され(研究番号:1812),全ての被験者に研究目的・方法を説明し研究参加への同意を書面にて得た.</p>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 46S1 (0), I-108_2-I-108_2, 2019
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390564238111305984
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- NII論文ID
- 130007694095
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可