大腿四頭筋筋力低下は変形性膝関節症の発症にどのような影響を及ぼすか

書誌事項

タイトル別名
  • -筋力低下ラットモデルを用いた検証-

説明

<p>【はじめに、目的】</p><p>膝の変形性関節症(OA)は加齢・性別・外傷・疾病・遺伝などの様々な要因から発症する。特に大腿四頭筋は膝OA患者において筋力低下、萎縮を認めるとの報告が多数ある。しかしながら、大腿四頭筋の筋力低下がどのような理由で膝OAに影響を及ぼすのかは不明である。動物モデルを用いた先行研究において、下肢筋力低下条件下での身体運動に伴う膝の動的関節不安定性は関節内の力学的環境の変化を通して膝関節軟骨変性に影響を及ぼす可能性があることを指摘している。そこで、本研究は大腿四頭筋の筋力低下と身体運動との相互作用による膝関節への運動学的影響、関節軟骨への組織学的な影響、関節内の炎症性因子への影響を検証した。</p><p>【方法】</p><p>12週齢のWistar系雄性ラット15匹を5匹ずつランダムに「コントロール群」、「筋力低下群」、「筋力低下+運動群」の3群に割り当て、大腿神経切離により大腿四頭筋筋力を低下させる外科的介入及びトレッドミルを用いた運動介入を実施した。4週時点で走行運動中の動画とレントゲン撮像を用いた運動学的分析、一般染色による膝関節軟骨の組織学的分析、免疫組織化学染色による関節内炎症性因子の分析を実施した。分析では、大腿四頭筋の筋湿重量、大腿四頭筋筋力低下の評価のためのFoot Base Angle (FBA)、立脚期膝関節屈曲角度、軟骨評価のためのMankinスコア、非石灰化軟骨厚、軟骨細胞数、炎症性因子の評価のためのInterleukin (IL)-1β・Tumor Necrosis Factor (TNF)-α・Matrix metalloproteinase (MMP)-13の陽性細胞率を指標として用いた。</p><p>【結果】</p><p>「コントロール群」に対し、「筋力低下群」「筋力低下+運動群」では筋湿重量の低下、FBAの増加、立脚期膝関節屈曲角度の増加を認めた(p<0.01)。「コントロール群」、「筋力低下群」、「筋力低下+運動群」の間で、Mankinスコア、非石灰化軟骨厚、軟骨細胞数、IL-1β・MMP-13の陽性細胞率は有意差を認めなかった。一方で、TNF-αの陽性細胞率について、「筋力低下群」に対し「筋力低下+運動群」での脛骨内側における増加を認めた(p<0.05)。</p><p>【考察】</p><p>筋湿重量、運動学的分析の結果より、大腿四頭筋の筋力低下は運動中の膝関節の運動学的変化を引き起こしたと考えられた。しかしながら、組織学的分析の結果より、4週間の筋力低下及び身体運動に伴う膝関節の運動学的な変化が関節軟骨へ及ぼす影響はないと考えられた。ただし、一部の炎症性因子の増加を認めたことから、筋力低下と身体運動量の増加による相互作用は過度な力学的ストレスとなり、長期的には膝OAに影響する可能性も示唆され、今後長期的な分析が必要とされる。</p><p>【結論】</p><p>本モデルにおける大腿四頭筋の筋力低下と身体運動との相互作用は4週時点における膝OA発症への影響を認めなかったが、脛骨内側の軟骨細胞においてTNF-α陽性細胞率の増加を認めた。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>埼玉県立大学倫理審査委員会の承認後、動物実験基本計画書ならびに実施計画書に従い研究を実施した (承認番号29-4) 。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), I-150_2-I-150_2, 2019

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564238111310592
  • NII論文ID
    130007694151
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.i-150_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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