非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍患児に対する理学療法経験
説明
<p>【はじめに】</p><p> 非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍(AT/RT)は胎児性脳腫瘍の一つで悪性度は高く予後不良とされている。今回AT/RT患児の理学療法を経験したので報告する。</p><p>【症例紹介】</p><p> 3歳女児。出生歴、発育歴は問題なし。診断名はAT/RT、閉塞性水頭症。歩行時のふらつき、嘔吐があり、近医受診し、MRIにて後頭蓋窩腫瘍、水頭症を指摘。当センター転院後、同日脳室ドレナージ術施行。入院8日目に開頭腫瘍摘出術が施行され一部腫瘍を摘出。病理診断の結果AT/RTと診断される。入院23日目より化学療法開始し、入院142日目から188日目まで放射線療法を追加。入院275日目に自家末梢血幹細胞移植を施行された。</p><p>【経過】</p><p>理学療法は、入院31日目より開始した。初回評価時は清潔隔離中で安静度はベッド上。表出は声かけに対し頷きのみであった。側臥位までの寝返りは自立、その他は全介助であった。痙性は認めないが、上肢は運動時に振戦を認めた。介助での起き上がりでは、体幹の動揺が著明であった。理学療法は清潔隔離中のため、全身状態に注意しながらベッド上での介助座位から開始した。化学療法による腫瘍の縮小に伴い徐々に身体機能の改善を認めた。しかし化学療法中や移植後は嘔吐、倦怠感、腹痛等による活動量や栄養状態の低下があり、骨髄抑制中は安静度の制限もあった。また姿勢保持、動作時の動揺は恐怖心に繋がった。理学療法はモチベーションを維持しながら、活動量、動作能力の向上を目標に実施した。毎回児、母と状態に合わせた目標を立て、清潔隔離中はベッド上にて可能な範囲での座位を実施し、理学療法室に出棟可能な時は、お店やおままごとを設定し座位や立位場面をつくった。介助歩行が可能になれば、お買い物ごっこで短距離から歩行も行った。病棟ではバギー移乗、手をつないで病棟内歩行、院内のコンビニへと活動量を拡大した。更に歯みがきは洗面台まで行く、更衣もできる範囲は自身で行うように促し、児が達成感を得られるようにした。退院前のMRIで腫瘍の残存や再発はなく、入院316日目に寛解退院した。退院時には運動時の上肢振戦は軽減し、座位は安定したが、立位、歩行での動揺は残存していた。移動は屋内手つなぎ歩行が主で、独歩は1m可能だったが、易疲労性あり短距離でも抱っこを求めていた。保育園への復帰を目標に、退院後も外来理学療法を継続し、退院後5か月で自宅内移動は独歩自立、屋外でも短距離独歩を獲得し、保育園復帰した。</p><p>【考察】</p><p>本症例においては、遊びの中で楽しみながら理学療法を実施したことで、治療時期ごとの副作用や低栄養状態、更には動作時の動揺による恐怖心がある中でもモチベーションの向上が可能であったと考える。併せて、理学療法時間以外にも、母が清潔隔離中は座位での遊びを促したり、手つなぎ歩行で積極的に院内での歩行場面をつくったりと、児の体調に合わせて関われたことが、更なる活動量、動作能力の向上に繋がったと考える。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>ヘルシンキ宣言に基づき、患児の保護者に発表の主旨を説明し、同意を得た。</p>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 46S1 (0), J-73_2-J-73_2, 2019
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390564238111333760
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- NII論文ID
- 130007694406
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可