自立歩行が可能な生活期脳卒中者における転倒とその関連指標の類型化

  • 石毛 里美
    順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科 汐田総合病院リハビリテーション課
  • 涌井 佐和子
    順天堂大学スポーツ健康科学部
  • 内藤 久士
    順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科

説明

<p>【はじめに、目的】生活期脳卒中者の転倒予防は, 要介護度悪化防止のために重要である. 脳卒中者の転倒関連要因として, 身体機能や生活機能の他に身体活動量やバランス自己効力感;the Activities-specific Balance Confidence(ABC) scaleが重要とされる. 特にABC scaleは海外において地域高齢者や脳卒中を始めとする疾患対象者に広く使用されており, AHA/ASAによる脳卒中理学療法ガイドラインの中での推奨指標となっている. 一般的にバランス自己効力感が高いほど転倒は少ないとされるが, 臨床的にはその逆の者も見られる. 本研究の目的は, 歩行自立の生活期脳卒中者における転倒とその関連指標の横断データを用いて類型化し, その特徴を明らかにすることとした.</p><p>【方法】対象者:地域在住脳卒中者80名(年齢66.5±9.5歳, 男53名・女27名, 発症後4.2±3.6年, MMSE28.2±2.8点). 調査方法:運動機能測定及び自記式質問票による調査. 測定項目:過去1年間の転倒回数, Berg Balance Scale(BBS), 日本語版ABC scale(ABC-J), 老研式活動能力指標(TMIG-IC), International Physical Activity Questionnaire-Short Version(IPAQ-SV; 身体活動量Mets*min/week及び座位時間hour/dayを算出). 統計解析:初めに転倒頻度とその関連指標との関連について相関分析を行った. 次に, クラスター分析(Ward法)により対象者を類型化した. その後, クラスターを独立変数として, 各指標の平均値±標準偏差 (中央値, 四分位範囲)を算出した.</p><p>【結果】全体では転倒頻度とその関連指標との有意な関連は得られなかった. クラスター分析の結果, 対象者は以下の4グループにカテゴリ化された. クラスターⅠ(n = 22); 転倒回数0.3±0.5(0.0, 0-1), BBS 50±5(51, 47-54), ABC-J 76±17(75, 59-92), TMIG-IC 11±2(11, 9-12), 身体活動量1753±1285(1545, 923-2131), 座位時間5.3±2.3(5.0, 3-7). クラスターⅡ(n = 26); 転倒回数0.1±0.3(0, 0-0), BBS 47±8(49, 42-54), ABC-J 50±21(51, 31-65), TMIG-IC 8±3(8, 5-11), 身体活動量1258±930(990, 574-1601), 座位時間13.7±2.8(14.0, 12.0-15.0). クラスターⅢ(n = 23); 転倒回数2.1±0.9(2.0, 2.0-2.0), BBS 49±4.8(49, 45-52), ABC-J 57±20(56, 43-66), TMIG-IC 9±3(11, 8-11), 身体活動量2399±1414(2070, 1070-3230), 座位時間8.7±4.3(10.0, 6.0-10.0). クラスターⅣ(n = 9); 転倒回数2.0±1.7(2.0, 0.5-4.0), BBS 30±9(32, 23-36), ABC-J 45±27(56, 19-67), TMIG-IC 6±3(5, 4-8), 身体活動量222±135(175, 120-325), 座位時間11.7±6.3(10, 6.5-18). 主な特徴:クラスターⅠ:転倒回数, 座位時間が少なく, 生活機能やバランス機能, 自己効力感が高い傾向. クラスターⅡ:転倒回数は少ないが, 身体活動量は少なく, 座位時間が長い傾向. クラスターⅢ:身体活動量は高いが, 転倒回数も多い傾向. クラスターⅣ:身体活動量が少なく, 生活機能が低く, 転倒が多い傾向.</p><p>【結論】歩行自立の生活期脳卒中者を類型化すると, 4つのクラスターが検出された. 転倒の多い2つのクラスター(Ⅲ, Ⅳ)はその特徴が異なり, 特にクラスターⅢではバランス関連指標は良好な一方転倒も多い傾向があることが明らかになった.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究は順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究倫理審査委員会の審査を受け, 承認を得て実施した (受付番号院27-85). なお, 研究の実施にあたっては, 関係者に利益や不利益について明記した説明書・同意書を作成し, 研究目的, 内容を事前に説明し, 署名による同意を得た.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), C-113_2-C-113_2, 2019

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564238111551744
  • NII論文ID
    130007692666
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.c-113_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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