タイムマネジメント研修導入の効果
書誌事項
- タイトル別名
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- ─学生から社会人への転換期,新卒療法士を対象とした3週間の挑戦─
説明
<p>【はじめに】</p><p>経済産業省が2006 年より提唱する「社会人基礎力」において,チームで働く力を構成する要素「規律性」の中で,社会のルールや人との約束を守る力を挙げている。時間を大切にし,約束や期限を守ること,出勤から業務終了までのタイムマネジメントは社会人の基礎である。加えて,療法士は時間を単価として診療報酬を受け取る業種であり,患者や多職種との信頼構築にも関わる重要な能力であることを認識しなければならない。そこで我々は,新卒療法士がタイムマネジメントの重要性を理解し,それを行えることを目的として研修を導入した。尚,タイムマネジメントの定義は「目標を達成するために時間を効果的に使用する行動」(Claessens et al,2007)とし,その行動は「時間の見積もり及び時間の活用(井邑ら,2016)」とした。</p><p>【方法】</p><p>対象は,2018 年4 月1 日に入職した療法士31 名(理学療法士17 名,作業療法士10 名,言語聴覚士4 名)である。研修期間は4 月9 日~ 4 月27 日までの3 週間,朝8 時15 分~ 8 時25 分までの10 分間とした。内容は,スケジュール表とTODO リストの作成である。ここでは,時間を決めて課題に取り組むことの重要性を伝え,一日のスケジュールとやるべきことを可視化し,空き時間の有効活用も促した。作成したスケジュール表とTODO リストは,記載の不備があればその場で修正し,翌日に反映できていることを確認した。研修の効果は,Kirkpatrick の4 段階教育評価モデルに準じ,レベル1:研修に対する反応,レベル2:学習内容の習得度,レベル3:実践への活用について,フォローアップ調査(研修直後,2 ヶ月後,3 ヶ月後)を実施した。尚,全ての調査は4 件法と自由記載により構成したアンケートを用いた。</p><p>【倫理】</p><p>今回用いたアンケート調査は全て無記名とし,回答をもって自由意志による参加とした。</p><p>【結果】</p><p>研修期間中の遅刻・欠席はなく全員が3 週間受講した。研修前にスケジュール表とTODO リストによるタイムマネジメントを知らなかった人は65%,知っていた人35% のうち実践できていたのは半数であった。研修終了時には,対象者全員がスケジュール表とTODO リストを作成できるようになり,研修前と比較してタイムマネジメントに関する意識の高まりを実感できていた。時間の使い方がうまくなること,習慣化できることを主な理由として,全員から次年度以降も続けたほうが良いとの回答が得られた。3 ヶ月後の調査では,全員が継続的にスケジュール表とTODO リストを活用していたが,19%(6 / 31 名)において,指示外の超勤や約束の時間に遅れる,確認のタイミングが遅れることを理由に「あまり時間管理できていない」と感じていた。</p><p>【考察】</p><p>研修後3 ヶ月経過時点において,対象者全員がスケジュール表とTODO リストを活用できていた。Kirkpatrick は,実践への活用(行動化)の条件として,本人が変化したいという願望を持っていること,何をどうしたら良いのかを知っていることを挙げている。対象者自身がタイムマネジメントに対する意識の高まりを実感できたことに加え,3 週間に渡り作成したリストの確認・修正を繰り返すという研修スタイルにより,行うべきことが明確となりその後の継続に繋がったと考える。しかしながら,実施単位数や書類作成数の増加に伴い,タイムマネジメントができていないと感じる対象者が少なからず存在していた。これには,タイムマネジメント以外の要因も含まれると推察され,改善の可能性を含めて今後の課題としたい。</p><p>【結論】</p><p>新卒療法士に対する3 週間に渡る研修は,継続的なタイムマネジメントに寄与した。</p>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 46S1 (0), D-45-D-45, 2019
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390564238111567744
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- NII論文ID
- 130007692833
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可