臨床実習における学生の満足度因子について

  • 小関 友記
    仙台青葉学院短期大学リハビリテーション学科
  • 加藤 勝行
    仙台青葉学院短期大学リハビリテーション学科
  • 大友 篤
    仙台青葉学院短期大学リハビリテーション学科
  • 村上 賢治
    仙台青葉学院短期大学リハビリテーション学科
  • 片田 昌子
    仙台青葉学院短期大学リハビリテーション学科
  • 三浦 雅史
    仙台青葉学院短期大学リハビリテーション学科

説明

<p>【はじめに】</p><p>臨床実習に対する満足度は,動機づけや職業意識に影響する因子であるといわれている。しかし,現在の実習においては指導者や実習施設によって実習内容が異なり,実習の満足度には差があるとの報告が散見されている。多くの満足度に関する報告は横断的であり,複数回行われる臨床実習において満足度への因子がどのような変化を示すかを検討した研究はほとんどみられない。</p><p>臨床実習満足度に関しては,職業意識や意欲,能力の変化,環境的,心理的因子に影響され,経時的に変化することが予想され,学生の能力や状況を踏まえ適切な指導体制を組むには,満足度に影響する因子をそれぞれの実習において理解し指導に活かす必要がある。そこで,臨床実習II,臨床実習III,臨床実習IV の実習終了後に実施した臨床実習アンケート結果の分析を試みた。</p><p>【方法】</p><p>理学療法学養成校において,平成28 年度臨床実習II 及び平成29 年度臨床実習III,臨床実習IV をそれぞれ修了し,この研究に同意を得た学生に対して質間紙法にて行った。臨床実習II を行った学生87 名のうち,質間紙の回答を得られた85 名(男子50 名,女子35 名),臨床実習III を行った学生80 名のうち,回答を得られた69 名(男子39 名,女子30 名),臨床実習IV を行った学生85 名のうち,回答を得られた59 名(男子32 名,女子27 名)に対して分析を行った。</p><p>本研究で用いた臨床実習用アンケートの項目は実習満足度,実習時間,指導方法,実習施設の雰囲気など18 項目にのぼる。一部の質間は詳細な情報を得るため,自由記述を設定した。それぞれの項目においてはLikert 型5 段階評価(①適切だった②ほぼ適切だった③どちらともいえない④あまり適切ではない⑤全く適切ではない,など①は良好な回答,⑤は不良な回答で設定)で回答を求めた。</p><p>分析方法として,満足度とそれぞれの質間項目の関連を分析するためSpearman の相関係数を算出した。そして相関が強い項目(相関係数0.4 以上)を独宣変数,実習満足度を従属変数とした重回帰分析を行った。重回帰分析は有意水準5% 末満であることを変数投入の打ち切り基準としたステップワイズ法を実施した。それぞれの統計処理にはSPSS Statistics ver,21.0 を使用した。</p><p>【倫理】</p><p>本研究における研究協力者は,ヘルシンキ宣言に沿った研究としての意義について計画書と同意書の確認を得て,かつ本研究の説明に理解を得られた学生とした。調査には同意書およびアンケートの提出を持って研究に同意したものとし,学生の個人情報は暗号化を行い,分析の過程で個人が特定されないよう配慮した。本研究によって個人に対し不利益が生じる状況は発生しないことを説明した。また学生から中止要望が出た場合には,ただちに収集したデータから削除することを説明した。</p><p>【結果】</p><p>統計学的分析の結果,臨床実習II では実習の難易度,指導者の工夫,関心の高まりが満足度と有意差が認められた。臨床実習III では指導時の適切性,実習への積極性に有意差が認められた。臨床実習IV では実習施設の雰囲気,指導時の適切性,自宅学習の集中度に有意差が認められた。</p><p>【考察】</p><p>臨床実習II は最初の長期実習という状況により受動的姿勢となるため,難易度調整や指導工夫による理解,そこから得られる関心の高まりが満足度に影響しており,III やIV に進むに従い現れる積極性や自主学習の必要性を育む適切な指導と環境が満足度へ影響していくと考えられる。</p><p>【結論】</p><p>臨床実習の各段階において,その時点における実習生の心理的背景を考慮した関わりが指導者ならびに実習施設に必要である。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), D-29-D-29, 2019

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564238111570048
  • NII論文ID
    130007692870
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.d-29
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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