発達障害児の姿勢制御の特性について
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- 越後 あゆみ
- 東北メディカル学院
説明
<p>【はじめに・目的】</p><p>超早産児の20〜50%に精神遅滞や発達障害を認めるとされ、注意欠陥・多動性障害(以下AD/HD)や学習障害(以下SLD)では50%、自閉症スペクトラム障害(以下ASD)では約40%という高い確率で協調運動障害を併発するとされている。そのため、発達障害児の運動の不器用さは日常生活の困難さを生み出す一つの要因となっていることが考えられる。軽度脳性麻痺児(以下CP)やダウン症児(以下DS)は明らかな麻痺の有無や筋緊張の低下、変形などを認めるため、粗大運動や姿勢制御に影響を及ぼすことが明らかである。しかし、発達障害児は明らかな麻痺がないにも関わらず運動の不器用さやバランスの悪さが指摘される。そこで、今回は発達に関して何らかの障害を有する児を対象に、姿勢制御に関するテストを実施し、ダウン症児や軽度脳性麻痺児と違いがあるのかを検討した。</p><p>【方法】</p><p>対象は、放課後児童デイに通う23名の学童児とした。平均年齢8.6±2.3歳、男児15名、女児8名であった。疾患の内訳はASD 14名、AD/HD 2名、LD 1名、CP1名、DS 5名で、全員が立位・歩行ともに自力で可能であった。静的バランスの評価として、静止立位時の重心動揺を重心動揺計(Kenz社製 Stabilio 101)を用いて測定した。測定項目は、総軌跡長、外周面積、矩形面積、実効値面積とした。動的バランスの評価は、新田らの報告を参考に、左右片脚立位時間、左右片脚ジャンプ回数、直線歩行時のはみ出し回数、バードドックの可否、体幹の屈曲・伸展保持時間、サイドブリッジ保持時間とした。統計処理は、対象児を発達障害群とCP・DS群の2群に分類し、各群の測定項目をShapiro-Wilk検定の後、対応のないt検定またはMann-WhitneyのU検定にて2群の比較を行った。</p><p>【結果】</p><p>発達障害群は17名、CP・DS群は6名であった。重心動揺の測定項目では、外周面積、矩形面積、実効値面積で発達障害群が有意に高値を示した(p<0.05)。これとは逆に、右片脚立位時間では発達障害群11.18秒±11.11秒、CP/DS群4.61±3.19、右サイドブリッジでは発達障害群5.76±±7.11、CP/DS群0.67±1.21秒で発達障害群の保持時間が有意に長い結果となった(p<0.05)。ただし、片脚立位やサイドブリッジ以外の項目では、2群の間に有意な差は認めなかった。</p><p>【考察】</p><p>発達障害群では、より運動が容易な静止立位保持で外周面積や矩形面積,実効値面積がCP・DS群よりも高値を示した。このことから、発達障害群では静止立位時の動揺が大きく,バランスが悪いことが考えられた。しかし,片脚立位では姿勢制御がより高度になるにも関わらずCP・DS群に比べ保持時間が長くなった。これらのことから、発達障害児のバランスの悪さは単に運動の難易度のみが関連していないことが考えられた。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>調査参加に先立ち、対象者の保護者に本調査の趣旨と方法を口頭で説明し、同意を得た。</p>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 46S1 (0), E-80_2-E-80_2, 2019
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390564238111595904
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- NII論文ID
- 130007693197
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可