アンドロゲン低下による筋萎縮応答の身体部位による比較

DOI

抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>排泄コントロールの機能維持はQOLにとって重要である。排泄コントロールには主に骨盤腔に存在する筋が関与している。効果的なリハビリテーション介入の確立のためには対象となる筋の特性について理解する必要があるが、筋の生理学的知見の多くは四肢筋を対象とした研究により得られたものである。近年、身体内の筋は均質ではなく、身体部位ごとに様々な特性の違いをもつことが明らかにされつつあるが、排泄コントロールに関与する筋の特性については未だ不明な点が多い。そこで本研究の目的は、睾丸摘出によるアンドロゲン低下モデルマウスを用いて筋萎縮応答を全身の筋で比較し、身体部位ごとの筋特性の違いを明らかにすることである。</p><p>【方法】</p><p>12週齢のC57BL6雄性マウスを麻酔下にて、睾丸摘出術を行った群(Cast群)と偽手術を行った群(Sham群)に分けた。飼育から8週後に握力を測定し、頭部、四肢、骨盤腔から筋を採取し筋重量を測定した。長趾伸筋と尿道括約筋はコラゲナーゼ処理により筋線維を単離し、筋線維直径を測定した。統計処理にはStudentのT検定を用い、有意水準はp<0.05とした。</p><p>【結果】</p><p>Sham群とCast群において握力の差は見られなかった(Sham群1.90±0.09, Cast群 1.90±0.10, N±SE)。Cast群の四肢筋(上腕三頭筋、棘上筋、腕撓骨筋、前脛骨筋、長趾伸筋、腓腹筋、ヒラメ筋、足底筋)の重量はSham群と比べ有意な差は見られなかった。一方、Cast群の咬筋、球海綿体筋、肛門挙筋は有意に小さい値を示した(咬筋Sham; 41.8±1.3, Cast; 35.6±1.3, 球海綿体筋 Sham; 66.2±2.1, Cast; 19.2±1.8, 肛門挙筋 Sham; 29.9±1.8, Cast; 5.1±0.9, mg±SE)。長趾伸筋の筋線維直径は2群間で差が見られなかったが、Cast群の尿道括約筋の筋線維直径はSham群と比べ有意に小さい値を示した(長趾伸筋 Sham; 59.6±3.5, Cast; 63.0±0.8, 尿道括約筋; Sham; 36.2±2.3, Cast; 21.3±0.2, µm±SE)。</p><p>【結論(考察も含む)】</p><p>睾丸摘出による握力及び四肢の筋重量変化はみられなかった。一方、骨盤腔内に存在する球海綿体筋、肛門挙筋、尿道括約筋、及び咬筋では睾丸摘出による筋萎縮がみられた。以上より、アンドロゲン低下による筋萎縮応答は身体部位によって異なることが明らかとなった。この違いを生むメカニズムの解明はメンズヘルス領域のリハビリテーション介入方略の確立にとって貴重な知見となる可能性がある。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は所属機関の倫理委員会の承認を得て行った。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), H2-160_1-H2-160_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564238111642368
  • NII論文ID
    130007693687
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.h2-160_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ