腰椎術後患者における足関節運動時の末梢神経長軸方向の動態に関する研究

  • 江森 亮
    苑田第三病院リハビリテーション科 苑田会東京脊椎脊髄病センター
  • 伊藤 貴史
    苑田第三病院リハビリテーション科 苑田会東京脊椎脊髄病センター 苑田会リハビリテーション病院リハビリテーション科
  • 大坂 祐樹
    苑田第三病院リハビリテーション科 苑田会東京脊椎脊髄病センター
  • 吉田 大志
    苑田第三病院放射線科
  • 五十嵐 秀俊
    苑田会東京脊椎脊髄病センター
  • 大森 圭太
    苑田会東京脊椎脊髄病センター
  • 星野 雅洋
    苑田会東京脊椎脊髄病センター

書誌事項

タイトル別名
  • ~超音波を用いた手術前後の比較~

説明

<p>【はじめに、目的】</p><p> 末梢神経は身体運動に対して柔軟に適応し,周囲組織間を滑走している.脊椎術後には下肢の痛みが寛解する症例や筋力が向上してくる症例は多いが,末梢神経の動態との関連については明らかにされていない.近年では超音波診断装置(ultrasonography:以下US)の普及により生体における末梢神経の動きが詳細に解明されてきている.USを用いて行われる神経の長軸方向の動態分析には,神経系の動きを明確に定義するランドマークがないため,frame by frame cross-correlation analysis法(以下,フレーム法)などを用いて行われている.そこで今回は,腰椎疾患患者の手術前後における末梢神経の長軸方向の滑走距離の変化をフレーム法にて調査することとした.</p><p>【方法】</p><p> 対象は脊柱管狭窄症に対して手術を施行された8名とした.包含基準はL3~S領域のいずれかに狭窄がある者,術前に坐骨神経領域の疼痛・痺れがあり,測定肢位である背臥位にて他動的にSLR30°位を保つことが可能な者とした.除外基準は中枢神経疾患または下肢・体幹の整形外科疾患の既往がある者,末梢神経に影響を与える内科疾患を有する者,重篤な術後合併症を有する者とした.測定項目は術前と術後1週目の坐骨神経滑走距離とした.運動課題は,他動的な足関節中間位から最大背屈位とした.運動課題中の坐骨神経の滑走動画をUS(TOSHIBA社製Aplio300)にて記録した.プローブによる測定側は疼痛・痺れのある一側とした.また測定部位は,膝関節後面より3cm上方の坐骨神経走行部とした.神経滑走距離を録画した動画を動画解析ソフト(「Kinovea」:Kinovea 社製)にてフレーム法で測定した.統計解析は,術前と術後の神経滑走距離の比較に対応のあるt検定を用いた(有意水準5%).</p><p>【結果】</p><p> 対象は女性4名、男性4名であり、平均年齢(標準偏差)は72.4(6.5)歳であった.術式の内訳は経椎間孔腰椎椎体間固定術6名,椎弓切除術2名であった.平均固定椎間数は1椎間(範囲0-2)であった.神経滑走距離の平均値(標準偏差)は術前4.6(1.4)mm、術後7.2(1.9)mmであり,術前と比較し術後は有意に滑走距離が延長していた.(p<0.01)</p><p>【結論(考察も含む)】</p><p> 先行研究にて我々は,再現性の検討にて神経滑走距離の最小可検変化量(Minimal Detectable Change:以下MDC95)が2.0mmであることを確認している.今回の術前と術後の神経滑走距離の平均差は,2.6±1.9mmであり,統計学的な結果に加えてMDC95の数値を超えている事から,誤差ではなく真の変化であると言える.今回,脊柱管狭窄症患者に対する外科的手術は,術前と術後を比較すると術後に神経滑走距離が延長することが確認できた.今後は疼痛・感覚や機能・ADLとの関連を経時的に追跡し,USを用いた神経系の適切な評価を可能にすることで理学療法アプローチの一助になると考える.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>ヘルシンキ宣言に基づき,全対象者に対して,本研究の趣旨および内容を説明し同意を得た.なお,本研究は,苑田会倫理委員会の承認(承認番号:60)を得て実施した.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), H2-7_1-H2-7_1, 2019

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564238111672704
  • NII論文ID
    130007694054
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.h2-7_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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