廃用性筋萎縮からの回復を促進させる筋力トレーニングの頻度

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • -1日1回のトレーニングを2回に分けて実施すると効果は変わるか?-

抄録

<p>【はじめに、目的】廃用性筋萎縮の回復を促すために筋力トレーニングが行われるが、その最も効果的な条件は明らかにされていない。筋力トレーニングの条件はFITT、すなわち頻度、強度、タイミング、タイプの要素で決まるといわれる。これらの要素のうち、筋萎縮からの回復促進のための等尺性筋力トレーニングの運動強度は、最大筋力の40%(40%1RM)が至適であることを我々は報告した(Itoh, 2017)。そこで本研究では、FITTのうち頻度に着目して廃用性筋萎縮の回復促進に有効な筋力トレーニングの条件を検証した。</p><p>【方法】マウス(C57BL/6J、雄性)に対して2週間の尾部懸垂を施した後、萎縮した足関節底屈筋群に対して1週間の等尺性運動を施した。等尺性運動は、麻酔下のマウス下腿後面に電気刺激(40 Hz、2 ms、train 1 Hz、100 ms)を与え、この電流値を調整することで発揮されるトルクを40%1RMに保って実施した。この等尺性運動50回を1日に1セットのみ行う群(50-1群)と、25回を6時間あけて1日に2セット行う群(25-2群)の2群で実施し、尾部懸垂後運動を行わずに飼育したマウス(NT群)と筋萎縮からの回復の程度を比較した(各n=6)。評価は、足関節最大等尺性底屈トルクや遅筋のヒラメ筋および速筋の足底筋の筋線維横断面積を指標に行った。足関節最大等尺性底屈トルクは、麻酔下で下腿後面に100 Hz、5 mAの電気刺激を与えて測定した。筋線維横断面積は各筋の横断切片にdystrophinおよびmyosin heavy chain (type Ⅱ)の免疫化学染色を施し、筋線維タイプ別に測定した。</p><p>【結果】足関節最大等尺性底屈トルクは、等尺性運動を行った両群(50-1群:6.8±0.8 mNm、25-2群:6.8±0.5 mNm)で尾部懸垂から解放した直後(5.6±0.2 mNm)やNT群(5.9±1.0 mNm)に比べ有意に大きかった。筋線維横断面積は、50-1群のヒラメ筋でのみNT群のヒラメ筋の面積と比べ有意に大きかった(50-1群:1331±142 µm2、25-2群:1218±225 µm2、NT群:1171±105 µm2)。足底筋にはどの群間にも有意な差を認めなかった(50-1群:1557±361 µm2、25-2群:1429±99 µm2、NT群:1344±105 µm2)。筋線維タイプ別の筋線維横断面積は50-1群のTypeⅡ線維以外の線維の面積でのみ、NT群の面積と比べ有意に大きかった。</p><p>【考察】今回のトレーニング条件では運動頻度に関わらず、筋力の回復促進効果を認めた。ただ、筋線維横断面積の回復促進効果は50-1群のヒラメ筋のみに認められた。この理由としてヒラメ筋に割合が多いTypeⅠ線維特異的に回復促進が起こっていることが影響していると考えられた。ただ、その理由やメカニズムについては不明であり今後の検討課題である。1日に行う等尺性運動の回数や頻度も含めて検証したい。</p><p>【結論】1日50回1セットの40%1RMの等尺性筋力トレーニングを1日25回2セットに分けても、筋萎縮からの筋力の回復促進効果は変わらないが、組織学的な回復促進効果は異なることが判明した。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究は、名古屋学院大学動物実験委員会に諮り、承認を得た後に行った(No. 2007-007、2014-001)。本研究に関わる開示すべき利益相反はない。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), I-114_1-I-114_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564238111682816
  • NII論文ID
    130007694105
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.i-114_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ