側臥位での呼気筋トレーニングが随意的咳嗽力に及ぼす即時効果

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p>咳嗽の重要な役割に痰喀出機能がある。咳嗽4相のうち、第3相、第4相に腹横筋が最も活動するとされており、咳嗽力における腹横筋の活動に着目した。腹横筋を強化する方法の一つに呼気筋トレーニング(EMT)があり、最大呼気口腔内圧の10%-15%負荷で腹横筋がより効果的に収縮する可能性が示されている。また、咳嗽機能は姿勢の影響を受け、座位に近い姿勢が有効とされるが、対象者の状態や環境等によっては座位をとることが困難な場面が存在する。このような場合に、臥位姿勢の中で最も咳嗽に有利な側臥位をとり、EMTを実施することで咳嗽力を高められるのではないかと考えた。本研究ではその基礎的検討として、健常者を対象に測定を行った。</p><p> </p><p>【方法】</p><p>健常男性18名(平均年齢22.2±1.8歳)を対象とした。本研究の全日程は4日間とし、初回に身長、体重、呼吸機能を測定し、EMTおよび随意咳嗽の練習を行った。2-4日目はEMTを実施し、その前後に咳嗽力の評価として咳嗽時最大呼気流速(CPF)を測定し、Borg Scaleの聴取を行った。EMTを行う回数は3条件(10回、20回、30回)設け、1日1条件実施した。姿勢はEMT、CPF測定共に左側臥位とした。測定終了後、咳嗽の行いやすさに関するアンケートを聴取した。CPF、Borg Scaleの値に関して2元配置分散分析を行い、交互作用を認めた場合は単純主効果の検定を行った。</p><p> </p><p>【結果】</p><p>CPFに交互作用はなく、10回EMT、20回EMT、30回EMTにおいて、EMT前後で有意差は認められなかった。Borg Scaleは交互作用を認めた(p<0.01)。EMT前は10回EMTと20回EMTとの間に有意差を認め(p<0.05)、EMT後は10回EMTに比べて20回EMT、30回EMTのBorg Scaleは有意に高値であった(p<0.01)。</p><p> </p><p>【考察】</p><p>EMTを仰臥位で行った先行研究においてCPFが有意に増加したのに対し、本研究のCPFに有意な変化はなかった。側臥位は端座位と同程度の肺気量を保つことができる姿勢であるとされており、肺活量や呼吸筋力は、身長、体重、年齢が影響する。本研究の対象者は20歳代でCPF値が十分保たれており、側臥位をとることで咳嗽に必要な肺気量が十分確保され、EMTによる影響が少なかったと考えられる。また、20回EMTと30回EMTのBorg Scale結果から、側臥位でのトレーニングによって筋疲労が起こり、EMT後の咳嗽時に十分な呼出が困難だったとも考えられた。</p><p> </p><p>【結論】</p><p>側臥位で10-30回のEMTを行うことによる咳嗽力への即時的な効果は認められなかった。</p><p> </p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>全ての被験者には、研究の趣旨と内容を口頭および文書で十分に説明し書面にて同意を得た。本研究は金沢大学医学倫理審査委員会の承認を得て行った(承認番号770-1)。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), I-93_2-I-93_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564238111697408
  • NII論文ID
    130007694322
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.i-93_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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