飼育環境下でコキクガシラコウモリの自力採食を促す給餌方法の確立

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タイトル別名
  • A new technique for inducing self-feeding in captive Japanese little horseshoe bats, <i>Rhinolophus cornutus</i>
  • シイク カンキョウ カ デ コキクガシラコウモリ ノ ジリキサイショク オ ウナガス キュウジ ホウホウ ノ カクリツ

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抄録

<p>本研究では,これまでに飼育が困難とされてきたコキクガシラコウモリ(Rhinolophus cornutus)を対象に,餌台からの拾い食いを繰り返し行わせる学習訓練によって自力採食を促す方法(学習法)を開発し,個体を長期間飼育する上での有効性を検証することを目的とした.飼育個体は,それぞれ(1)学習法による給餌群,(2)餌台に吸音性のある素材を用いることで餌の発見効率を高め,自力採食を促す給餌群(吸音材利用法)および(3)差し餌を継続する給餌群(手差し法)のいずれかに割り当てられた.給餌実験は個体が死亡するまで実施され,飼育期間を通じた生存率,自力採食の達成までに要した日数(順化日数)および飼育従事者が給餌作業に要した時間を,各給餌群間で比較した.学習法による給餌群では,学習訓練を行う季節の違いによる順化日数と生存率の差異についても比較した.学習法による給餌群の生存率は,飼育期間を通じて緩やかに低下したのに対し,吸音材利用法と手差し法の生存率は,飼育開始から20日目までに急激に低下する傾向を示した.各給餌群間で生存曲線を比較したところ,学習法は他の2種類の給餌群よりも有意に高い生存率を示し,順化日数の比較では吸音材利用法よりも学習法の方が有意に短かった.飼育従事者が給餌作業に要した時間は,学習法でもっとも短かった.生存率,順化日数および作業労力の比較によって,学習法は周波数一定型の超音波音声を有するコウモリにおいて,飼育個体を自力採食に導く有用な手法であることが示唆された.学習法では冬眠期に捕獲した場合に,活動期よりも有意に長い順化日数を要し,生存率も低かったことから,学習法を適用する時期については慎重に決定される必要があると考えられた.</p>

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