加速度センサを用いた車椅子適合評価手法の提案

DOI
  • 谷口 公友
    ㈱モルテン 健康用品事業本部 開発統括部

書誌事項

タイトル別名
  • -駆動効率を活用した車椅子シーティング-

抄録

<p>【はじめに】車椅子の走行性能を計測するには、計測装置を搭載した実験用の車椅子を用いていたため、実際に当事者が使用している車椅子の走行性能を計測する試みがなかった。しかし、車椅子自体の性能評価以上に車椅子シーティングの一環で、その車椅子が当事者にとって適合しているか客観的に評価する方法が必要である。そこで、今回当事者本人が乗っている車椅子に加速度センサを取り付け、車輪にかかる力(駆動力)と車体にかかる力(推進力)を計測した。同じ車種に乗っていても車椅子に伝わる推進力が異なれば、車椅子のセッティング(車軸位置や座角など)を変更する必要性を判断することが出来る。また、セッティングの変更により、駆動性が向上しているかを客観的に評価することが出来るようになるので、シーティングにおける評価指標として加速度を使用した方法が利用できないかと考え、計測実験を試みたので報告する。</p><p>【方法】被験者として車椅子当事者5名(せき損Th9、固定車1台・折畳車4台)と健常者1名(40代男性、固定車)に対して実験を行った。右車輪軸①と車体(座面下部)②に加速度センサを計2か所設置した。屋内の平坦な直線路に静止した状態から20m先まで普段移動するように車椅子を漕いでもらった。計測は各4回行い、その平均値を用いた。サンプリング周波数200Hz。体重による差が出ないように標準化を行って駆動力と推進力を分析した。</p><p>【結果】計測の結果、走行時の当事者の車体には約60Nの推進力がかかっていることが分かった。セッティングが十分でない健常者の車体には約40Nの推進力しかかかっていなかった。また、同じ車種においても駆動効率(推進力/駆動力)が2倍も異なる車椅子があった。</p><p>【考察】固定車の車椅子の駆動効率が非常に高く、特にスピードに乗った惰行期での駆動効率は、他の車椅子と比較すると格段に良いことから、折畳車と固定車の主観的な乗り心地の差異だけでなく、駆動効率を客観的に計測することが出来た。また、固定車でも健常者が乗ったものは、駆動効率が非常に悪かったことから車椅子の仕様(固定か折畳)よりも車椅子の適合が重要であることが明らかとなった。つまり、固定車であっても乗る人の身体特性に適合する車椅子に乗っていなければ、漕いでも上手く車椅子に力が伝達されないため、身体負担から不良姿勢などへとつながることが考えられる。このことから、常に適合した車椅子に乗ることが重要であるため、駆動効率をシーティングの指標として今後活用していくことが必要であると考える。</p><p>【結論】今回、加速度センサを使用した当事者本人の車椅子による実験結果は、計測用車椅子による結果とほぼ同じような値であった。このことから、今後車椅子のシーティング評価指標として本手法を効果的に導入することが期待される。</p><p>【倫理的配慮】</p><p>(1)人間の尊厳および人権の擁護(プライバシー、身体面、精神面等への配慮)</p><p>本研究は、「臨床研究に関する倫理指針」を遵守し、各機関の倫理委員会の承認を得て実施する。データは研究を担当するスタッフのみがアクセス可能とし、内容が第三者の目に触れないように、また、データが漏洩しないように、作業方法、作業場所、データ保管方法等を厳重に管理する。研究成果の公表に際しては、個人が特定されることのないように配慮する。</p><p>(2)個人が受けるおそれのある心身上の危険性および不利益の排除方法</p><p>計測実験の内容には、既往年数、症状や痛みに関することを聞く部分があるため、嫌な思い出を想起させる可能性や、説明同意の際に時間を要すること、慣れない環境による不安や疲労による不利益の可能性も考慮し、計測実験への参加は、研究協力者の自由意思によるものであること、調査辞退の権利があることを書面で説明する。いつでも調査を辞退できること、また、辞退をしても、不利益は一切生じないことを書面にて説明する。</p><p>【説明と同意】</p><p>相手の理解を求め同意を得る方法(説明の内容等)</p><p>「臨床研究に関する倫理指針」に則り、文書を用いて説明し、説明した内容を被験者が理解していることを確認した上で、自由意思によるインフォームドコンセントを文書により取得する。その際、本研究に参加するか否かは被験者の自由意思に基づいて決定して良いこと、研究に参加しなくても不利益を受けないこと、一旦研究参加に同意した後でも特段の不利益を受けること無くいつでも同意を撤回できること、ただし、同意撤回以前に学会、論文等で発表した結果は取り消さないことを十分に説明する。</p><p>【資料(データを含む)・生体試料を管理する者】</p><p>所属 ㈱モルテン 健康用品事業本部 開発統括部 研究学術Gr 谷口公友</p><p>【個人の情報を管理する者】</p><p>所属 ㈱モルテン 健康用品事業本部 開発統括部 研究学術Gr 谷口公友</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), B-35_2-B-35_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564238111913856
  • NII論文ID
    130007692530
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.b-35_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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