肺切除術後の咳嗽力に影響を与える要因の検討

DOI

抄録

<p> </p><p>【目的】</p><p>肺切除術後に咳嗽力が低下した症例は排痰困難を呈して,肺合併症を発生しやすい状態となり得る.咳嗽力に関連する要因として年齢や肺活量,呼吸筋力など報告されているが,肺切除術後の咳嗽力については一定の見解が得られていない.本研究では肺切除術後の咳嗽力に影響を与える要因について検討することを目的とする.</p><p> </p><p>【方法】</p><p>対象は平成27年3月から平成29年8月に当院で肺切除術を施行した52名,平均年齢71.2±10.1歳とした.肺切除術後の咳嗽力は咳嗽時の最大呼気流量(CPF)を用いて術翌日に評価した.検討する要因は,年齢,性別,術式(葉切除・縮小切除),術前CPF,術前呼吸機能として肺活量(VC)・努力性肺活量(FVC)・1秒量(FEV1)・1秒率(FEV1%)・最大呼気筋力(PEmax)・最大吸気筋力(PImax),疼痛とした.術前呼吸機能はスパイロメータで測定し,疼痛はNumerical Rating Scale(NRS)を用いて術翌日の安静時と咳嗽時に評価した.統計解析は単変量解析を使用して術後CPFと各要因の関連性を確認した後に,術後CPFを従属変数,単変量解析で術後CPFと有意な関連を認めた要因を独立変数として重回帰分析を行った.</p><p> </p><p>【結果】</p><p>術前CPFは364.4±142.8L/min,術後CPFは161.7±53.1L/minで術後有意に低下していた.単変量解析の結果,術後CPFと関連を認めた要因は術前CPF(r=0.54),VC(r=0.39),FVC(r=0.40),FEV1(r=0.47),PImax(r=0.38),咳嗽時NRS(r=-0.40)であった.重回帰分析の結果,術後CPFに強く影響を与える要因として術前CPF(β=0.53)と咳嗽時NRS(β=-0.31)が抽出された.重回帰式は術後CPF=129.438+0.197×術前CPF-7.826×咳嗽時NRSであった(R2=0.462).</p><p> </p><p>【考察】</p><p>術後CPFに影響を与える要因として術前CPFと咳嗽時NRSが抽出されたことから,術後の排痰困難による肺合併症予防に対して,術前から咳嗽力を強化することや術後の疼痛コントロールが重要になると考えられる.</p><p> </p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は当院の倫理審査委員会の承認を得て,ヘルシンキ宣言に基づき実施した.対象者には事前に研究内容の説明および同意確認を行った.</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), A-75_2-A-75_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564238111918208
  • NII論文ID
    130007692582
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.a-75_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ