急性期病床から地域包括ケア病棟へ転棟した高齢患者の自宅退院後の健康関連QOLとその関連因子の検討

DOI

抄録

<p>【目的】</p><p>地域包括ケア病棟は、急性期病床からの受け入れ機能、在宅復帰支援機能を有している。本邦全体における地域包括ケア病棟からの在宅復帰率は約9割で、その対象疾患の多くは骨折、外傷患者となっている。現状としては、高い在宅復帰率であるが、退院後の健康関連QOLは明らかとなっていない。そこで、急性期病床から地域包括ケア病棟に転棟し、自宅退院した骨折患者の退院後の健康関連QOLの実態、その関連因子を明らかにする。</p><p>【方法】</p><p>対象は、当院の一般病床から自宅復帰を目的に地域包括ケア病棟に転棟した下肢・脊椎骨折患者の内、有効なデータを得ることができた高齢者32名(年齢76.1±6.6歳、男性11名、女性21名)とした。他施設から転院してきた者、入院前から車いすを使用していた者、地域包括ケア病棟での入院期間が14日以内の者は除外した。調査項目は退院時の運動機能評価として、下肢筋力を表す30秒椅子立ち上がりテスト(CS-30)、歩行評価を表すTimed Up & Go(TUG)、運動耐容能を表す6分間歩行距離(6MWD)とした。また、退院後の健康関連QOLの指標としては、Short-Form 36-Item Health Survey version2(SF-36)を使用、退院してから1か月後に質問用紙を郵送し、8つの健康概念からなる下位項目各々の国民標準値(50点)に基づいた得点、身体的サマリースコアー(PCS)を得点化した。統計解析は、SF-36における各得点の記述統計を算出した。また、PCSと年齢、各運動機能評価の相関関係を確認後、PCSを従属変数、単変量解析にて有意な相関を認めた運動機能評価項目を独立変数として、ステップワイズ法による重回帰分析を行った。統計学的有意水準は危険率5%とした。</p><p>【結果】</p><p>SF-36の結果は、身体機能:22.9±20.1、日常生活機能・身体:29.1±16.0、体の痛み:41.3±12.1、全体的健康感:48.5±9.6、活力:48.2±9.5、社会的機能:40.1±15.8、日常生活機能・精神:30.2±15.0、心の健康:48.0±10.4、PCS:29.5±16.6であった。PCSと有意な相関を示したのは、6MD(r=0.595)、CS-30(r=0.563)、TUG(r=-0.480)、年齢(r=-0.432)であった。重回帰分析では、CS-30が抽出され(β=-0.601,p<0.001)、モデルの調整済み決定係数は0.340であった(p<0.001)。</p><p>【考察】</p><p>SF-36の結果から、国民標準から比較すると、PCS、下位項目では『身体機能』、『日常生活機能・身体』、『日常生活機能・精神』が明らかに低値を示した。つまり、骨折患者においては、地域包括ケア病棟にて、リハビリの後に自宅退院してからも、1か月の時点では、身体的な理由で、活動が制限され、PCSが低下していることが示された。今回、重回帰分析の結果から、PCSとの関連性を認めたのは、CS-30のみであることから、CS-30が退院後のPCSに影響していることが示唆された。地域包括ケア病棟を退院後に、身体的QOLを高めるには、入院中にいかに、下肢筋力を増強させるかが、重要であると認識された。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究における対象者の個人情報の取り扱いについては、入院前に十分に説明を行い、同意を得た。また、研究の実施においては当院倫理委員会の承認を得て行った。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), H2-174_1-H2-174_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564238112013696
  • NII論文ID
    130007693719
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.h2-174_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ