外来リハビリテーションにおける整形外科疾患患者の疼痛に対する疫学調査

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抄録

<p>【はじめに】整形外科疾患における運動器疼痛は、痛みのメカニズムから侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛(以下:Nep)に大別される。実際、臨床ではこの両者が関与している混合性疼痛も多く、いずれにおいても心理、社会的要因が疼痛の遷延化に関与する場合や逆に疼痛が患者の心理状態に影響を及ぼす場合がある。NePの存在は慢性疼痛患者で多く報告されているが、慢性期以外の時期においてもNePが疑われる患者が散見される。</p><p>【目的】対象病院の外来リハビリテーションにおける整形外科疾患患者に対してNePの有無を確認し、心因性や社会生活の問題および健康関連QOLとの関係を検討することを目的とした。</p><p>【方法】対象は、埼玉県に位置する地域中核病院おいて平成28年10月の1ヶ月間に外来リハビリテーション(以下:外来リハ)に来院された整形外科疾患患者とし、評価項目に不備がなかった347名とした。評価項目は年齢、性別、疼痛部位、手術の有無、Numerical Rating Scale(NRS)、疼痛生活障害尺度(PDAS)、Pain Detect(PD)、Pain Catastrophizing Scale(PCS)、Hospital anxiety and depression scale(HAD)、SF-36とした。PDを用いてNePの有無を確認し、2群に分けて各評価項目との比較をおこなった。統計処理にはMann-WhitneyのU-testを用いた。</p><p>【結果】PDによるNePの有無はあり群が62名、なし群が285名であり、NePを呈している者の割合は約18%であった。NeP出現部位の割合は下腿、大腿、足部の順に高かった。2群間において年齢、NRS、PDAS、PCS、HADの不安、SF-36に有意差が認められた。</p><p>【考察】対象病院における外来リハでは、整形外科疾患患者の約18%にNePが認められた。Nakamuraらは、慢性疼痛持続者660名を対象にPDを用いてNePの有無をアンケート調査しており、NePが20%に認められたと報告している。本研究においてもNakamuraらとほぼ近似した値であったが、本研究では慢性疼痛患者だけでなく術後3ヶ月に満たない患者も含まれており、急性期から亜急性期の患者においてもNePを呈している者が確認できた。NeP出現部位の割合は下肢で高く、疼痛が下肢部位で併発していることから坐骨神経痛や馬尾症候群が疑われた。NePを呈している者では、NePを呈していない者と比較して痛みの程度が強く、痛みに対して破滅的な感情や不安を抱えていた。また、NeP患者では健康関連QOLも全ての項目で低下しており、疼痛に対する関与だけでなく心理、精神面のケアも含めて関わっていく必要があると考える。</p><p>【結語】整形外科疾患における外来リハビリには、慢性疼痛持続者だけでなく急性期から亜急性期の患者においてもNePを有している患者がいる可能性があり、リハビリを介入する上で注意が必要である。また、NeP患者では疼痛改善に対する関与だけでなく、心理、精神面のケアも含めて関わっていく必要がある。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究は、対象病院の倫理委員会の承認を得ておこなった。また、対象者には書面にて説明をおこないアンケートの提出をもって同意を得たこととした。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), H2-237_2-H2-237_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564238112027392
  • NII論文ID
    130007693862
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.h2-237_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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