椎体骨折患者の呼吸器合併症発症率とその関連因子の検討

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抄録

<p>【はじめに、目的】</p><p> 呼吸器合併症は安静臥床が原因の一つとなり、死亡率上昇や入院期間延長をもたらす。当院では保存治療対象の椎体骨折患者は床上安静となることが多く、呼吸器合併症の発症に至るケースもあるが、先行研究では椎体骨折の保存治療患者の呼吸器合併症発症率に関する報告はみられない。</p><p> 今回、当院における椎体骨折保存治療患者の呼吸器合併症発症率とその関連因子について調査し、その予防のための知見を得ることを目的に以下の検討を行った。</p><p>【方法】</p><p> 対象は平成28年度に入院した新鮮椎体骨折患者で65歳以上の保存治療対象者154名(女119、男35)。癌性骨折、破裂骨折、陳旧骨折、手術適応患者、椎体骨折が主疾患(多発骨折など)ではないもの、データに欠損値があるものは除外した。</p><p> 椎体骨折患者を後方視的に調査し、呼吸器合併症発症率を算出。また性別・体重・身長・BMI・安静期間の有無・床上安静期間日数・呼吸器併存疾患の有無・その他合併症の有無・多椎体骨折の有無・運動麻痺の有無・フレイルの有無をカルテより抽出。対象を呼吸器合併症発症群、非発症群に分け有意差のある項目をマンホイットニーのU検定、フィッシャーの正確確率分布等で抽出。抽出された有意差のある項目を独立変数、呼吸器合併症の有無を従属変数としてロジスティック多重回帰分析を行い、オッズ比(OR)を求めた。</p><p>【結果】</p><p> 呼吸器合併症発症者は10名(女8、男2)、発症率は6.5%だった。内訳は胸水4名、肺炎5名、血痰1名、上気道炎1名だった。発症群では体重が軽く、床上安静期間が長く、呼吸器併存疾患を持つ患者の割合が多かった。独立した関連因子としては体重(OR:0.90,95%CL:0.83~0.98)、床上安静日数(OR:1.11,95%CL:1.02~1.19)、呼吸器併存疾患の有無(OR:4.47,95%CL:1.15~19.5)が抽出された。</p><p>【結論(考察も含む)】</p><p> 本研究の結果から、椎体骨折保存治療患者の呼吸器合併症発症率は6.5%、その関連因子は呼吸器併存疾患、体重、床上安静日数と判明した。呼吸器併存疾患、低体重を把握しは症危険度の高いものとして事前に対策を講じることと、椎体骨折の早期離床に関しては相反する報告はあるものの床上安静期間を短縮することが椎体骨折患者の呼吸器合併症の予防に有効であることが示唆された。</p><p> 本研究の限界としてデータの欠損値があること、評価項目・関連因子の妥当性の検討が必要であることが挙げられる。</p><p> 今後は前向き調査にて、関連因子の妥当性を検討し、適切な治療介入に役立てることで呼吸器合併症発生防止につなげたい。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は、米盛病院倫理委員会の承認(承認番号:米倫18002)を得て実施した。また、ヘルシンキ宣言に基づき対象者における個人情報の保護など十分に留意し、匿名化した上で実施した。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), H2-9_1-H2-9_1, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564238112047488
  • NII論文ID
    130007694064
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.h2-9_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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