片脚着地動作における胸郭柔軟性低下が下肢関節に及ぼす影響

DOI
  • 岩本 博行
    福岡リハビリテーション専門学校 理学療法学科
  • 江口 淳子
    福岡リハビリテーション専門学校 理学療法学科
  • 藤原 賢吾
    福岡リハビリテーション専門学校 理学療法学科
  • 池田 幸広
    福岡リハビリテーション専門学校 理学療法学科
  • 中山 彰一
    福岡リハビリテーション専門学校

書誌事項

タイトル別名
  • -三次元動作解析装置と床反力計による検討-

抄録

<p>【はじめに、目的】歩行を可能とするためには、床反力の衝撃を身体で吸収しなければならない。第52回学術大会にて、片脚着地動作時に胸郭柔軟性低下により最大床反力増大、床反力出現時間が短縮することを報告した。しかし、増加した負荷がどの部位に影響を及ぼしているのか不明である。今回、胸郭固定時の下肢関節への影響を検討した。</p><p>【方法】対象は身体機能に問題のない健常成人男性16名(年齢18.8±1.2歳、身長170.8±5.8cm、体重67.6±7.9kg)とした。胸郭を包帯にて腋窩下縁から第10肋骨まで固定した。胸郭柔軟性低下の程度をスパイロメーター(ミナト医科学)にて計測し、通常時の%肺活量(以下、%VC)より固定時が20%以上低下しているのを確認して着地動作を施行した。方法は40 cm台から開眼にて直前にある床反力計に片脚着地を指示し、両下肢とも3回行った。計測には三次元動作解析装置(VICON社)、床反力計(AMTI社)1枚、赤外線カメラ6台を用いた。マーカーをPlug-In-Gait full Body modelに準じて貼付した。床反力最大時の脊柱、股・膝・足関節矢状面角度と下肢関節矢状面モーメント(以下、M)、身体重心と第7頚椎棘突起(以下、C7)、第10胸椎棘突起(以下、T10)、第2中足骨頭(以下、2MP)の矢状面垂線距離の3回の平均値を算出した。統計処理にはSPSSを用いた。%VCは対応のあるT検定、その他の項目はWilcoxonの符号付き順位検定を用い通常時と固定時の比較を行った。有意水準は5%未満とした。</p><p>【結果】%VC、股M、膝M(p<0.01)、股角度(p=0.035)、身体重心と2MP(p=0.043)に有意差を認めた。有意差を認めた項目の通常時、固定時の平均は%VC(110.9±15.4%、77.4±2.0%)、股M(-487.1±338.5Nmm/kg、-312.0±328.1Nmm/kg)、膝M(-56.2±96.1Nmm/kg、-108.7±137.4Nmm/kg)、股角度(22.5±9.6°、24.4±8.2°)、身体重心と2MP(13.6±2.4cm、14.1±3.0cm)であった。</p><p>【考察】胸郭柔軟性低下により身体重心と2MP距離が増加し、C7距離、T10距離に変化がなく、脊柱角度の変化もなかったことから、上半身質量が後方偏移していることがわかる。これにより、重心補正のために股屈曲角度が増大したと考えられる。膝Mが増加し、股Mが減少したことから、床反力ベクトルの後方傾斜角度が増大していることが考えられる。脊柱、膝、足の角度に変化が認められず、股屈曲角度の増大が認められた。また、股Mは減少し、股屈曲角度が増大していることより、股関節の荷重面積を増大させることで胸郭柔軟性低下によって増加した床反力の衝撃吸収を股関節が担っていると思われる。</p><p>【結論】胸郭柔軟性低下により膝M増加に伴う膝関節ストレス増加が示唆された。また、増加した床反力の衝撃吸収を股関節で担い、それに伴う股関節仕事量の増加が考えられる。これは近年言われているHip-Spine syndrome、Knee-Spine syndromeにあるように脊柱と股、膝関節には関係性があり、それを裏付ける結果となった。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】本研究は福岡リハビリテーション専門学校倫理委員会の承認を得て(承認番号:1617)、被験者には文章にて研究の趣旨を十分に説明し、同意を得たのちに実験を行った。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 46S1 (0), I-70_2-I-70_2, 2019

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390564238112068096
  • NII論文ID
    130007694283
  • DOI
    10.14900/cjpt.46s1.i-70_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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