ウェラブルセンサーによる短下肢装具装着歩行の分析

DOI
  • 富岡 一俊
    鹿児島大学大学院保健学研究科 垂水市立医療センター垂水中央病院
  • 川田 将之
    鹿児島大学医学部保健学科
  • 竹下 康文
    鹿児島大学大学院保健学研究科 垂水市立医療センター垂水中央病院

抄録

<p>【緒言】ウェアラブルセンサーで測定した体幹の加速度や角速度を指標とした歩行分析は,健常高齢者や脳卒中片麻痺者などを対象に有用性が報告されている。しかし,短下肢装具 (Ankle foot orthosis,AFO) の装着が歩行中の体幹加速度や角速度に与える影響を分析した報告は見当たらない。本研究の目的は,健常若年成人を対象に、ウェラブルセンサーで計測した体幹加速度及び角速度により、AFO装具による歩行の変化を分析できるか検証することである。</p><p>【対象】健常若年成人男性15名を被験者とした。</p><p>【方法】3軸の加速度計と角速度計を内蔵したウェアラブルセンサーを用いてトレッドミル歩行中の体幹の加速度及び角速度を測定した。また、同時に3次元動作解析装置を用いて骨盤の傾斜角度を測定した。測定条件は,裸足歩行,右下肢にAFOを装着した歩行 (以下,AFO歩行)の2条件とし,3種類の歩行速度 (0.45 m/s,0.89 m/s,1.34 m/s) で測定した。得られた加速度と角速度は,ローパスフィルターでノイズを除去後,右下肢の歩行周期で時間正規化を行った後、10歩行周期のデータを加算平均した。また,加速度のroot mean square (RMS) を算出した。各対象者の裸足歩行とAFO歩行中の加速度と角速度の加算平均波形のピーク値、加速度のRMSを比較し、AFOの装着による歩行の変化を分析した。統計学的検定には対応のあるt検定を用い、有意水準5%未満とした。</p><p>【結果】体幹加速度の加算平均波形では、側方成分の一部に有意な差を認めたものの、歩行速度を通じて一貫した傾向は見出せなかった。加速度のRMSはAFO歩行で、裸足歩行よりも有意に大きかった (p < 0.05)。体幹角速度の加算平均波形では立脚初期の左回旋の角速度が,AFO歩行で有意に大きかった(p < 0.01)。また、3次元動作解析装置で測定した骨盤傾斜角度では骨盤の左回旋角度が、立脚初期にAFO歩行で有意に大きかった (p < 0.01)。</p><p>【考察】今回の結果より,ウェアラブルセンサーを用いたAFO装着歩行の分析には、体幹加速度のRMS及び角速度の加算平均波形を併用することの重要性が示唆された。体幹加速度のRMSはAFO歩行で有意に裸足歩行よりも大きかったものの、加速度のRMSは歩行中の体幹動揺性の総和を示す指標であるため、歩行周期に応じた歩行の特徴を分析することは困難である。一方で、骨盤の水平面における立脚初期の左回旋角速度の増加は、三次元動作解析装置で検出された立脚初期の骨盤の左回旋角度の増加と一致していた。したがって、AFO装着歩行の客観的評価、介入効果の検証には、体幹加速度のRMSと角速度の加算平均波形を併用することが有用と考えられた。今後の課題として、脳卒中片麻痺者を対象に装具の種類や調整による変化を分析することで,装具の選択や治療効果の検証等へ発展できる可能性がある。</p><p> </p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本研究は,事前に所属施設の倫理審査委員会の承認を得て実施したものである (承認番号: 408)。また,研究の実施に際し,対象者に研究について十分な説明を行い,同意を得た。なお,発表者らに開示すべき利益相反関係にある企業等はない。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390565134803498112
  • NII論文ID
    130007760802
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2019.0_65
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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