膝蓋大腿関節症により内側膝蓋大腿靭帯再建術を施行された一症例
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- 井澤 康之
- 医療法人伴帥会 愛野記念病院
書誌事項
- タイトル別名
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- 膝関節屈曲可動域獲得に向けた試み
説明
<p>【はじめに】</p><p>内側膝蓋大腿靭帯(以下MPFL)再建術を施行した患者において膝関節屈曲可動域制限が残存する症例をしばしば経験する。今回、膝蓋大腿関節症と診断されMPFL再建術を施行された症例に対し、術後早期より理学療法を実施した結果、膝関節屈曲可動域が改善した症例を経験したため、考察を交えて発表する。</p><p> </p><p>【症例紹介】</p><p>症例は18歳の女性で、小学生の頃から両膝の疼痛があった。今回、疼痛が増強したため、当院を受診し両側膝蓋大腿関節症と診断された。初診時は両側膝関節とも全可動域運動可能で、腫脹も膝蓋跳動も認めなかった。疼痛は左膝関節に著明で、特に長距離の歩行を行った際に疼痛の増強を認めた。また左膝関節においてPatella grinding test、Apprehension testはともに陽性であった。そのため半腱様筋腱を再建靭帯として使用した左MPFL再建術を施行した。</p><p> </p><p>【理学療法経過】</p><p> 手術翌日より理学療法を開始した。初回介入時には左膝蓋骨周囲に広範囲な疼痛の訴えあり、Numerical Rating Scale (以下NRS)は8/10であった。また、左下肢の自動伸展挙上も困難であった。術後1週間はニーブレース固定下でPatella settingを指導し膝蓋骨の可動性維持に務めた。また、膝蓋下脂肪体の柔軟性維持のために膝蓋骨周囲組織のモビライゼーションも行った。術後2週目からは膝関節可動域練習を開始し、その際の膝関節屈曲可動域は35°であった。膝関節可動域練習は膝関節屈曲に伴い膝蓋骨が外側へ過剰に偏位しないよう注意しながら実施した。その後の膝関節屈曲可動域の経過は、術後2週で40°、術後3週で60°、術後4週で100°、術後5週で125°、術後8週で140°、術後10週で145°と推移していった。術後10週の時点で最大屈曲時のみに左膝蓋骨内側に若干の疼痛(NRS 1/10)を認めたが、Patella grinding test、Apprehension testはともに陰性で、日常生活動作にも問題は認められなかったため当院での理学療法を終了した。</p><p></p><p>【考察】</p><p>当院ではMPFL再建術後に1週間のニーブレース固定を行う。今回、手術翌日より理学療法を開始しPatella settingの指導や、膝蓋骨周囲組織のモビライゼーションを行ったことで膝蓋骨の可動性が低下することを防いだ。また膝関節可動域練習を行う際には、膝蓋骨の位置を確認しながら屈曲運動を行うことでMPFLに過度な伸張が加わらないよう注意し、再断裂、伸張痛のリスク管理を行いながら術後早期より積極的に実施した。また、本症例は術前に膝関節の可動域制限を認めなかったことから、術後の経過においては術前の膝関節可動域に制限がないことも重要な因子の一つであると考える。</p><p> </p><p>【結論】</p><p>MPFL再建術後のリハビリにおいては、①早期から膝関節周囲組織の伸張性・滑動性を獲得する、②MPFL再断裂のリスク管理を行いながら積極的な可動域練習を行う、③術前から膝関節全可動域を獲得することが重要であると考える。</p><p> </p><p> </p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>ヘルシンキ宣言に沿って個人情報に配慮し、本人と保護者には説明を行い、同意を得ている。</p>
収録刊行物
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- 九州理学療法士学術大会誌
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九州理学療法士学術大会誌 2019 (0), 79-79, 2019
公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390565134803539968
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- NII論文ID
- 130007760828
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- ISSN
- 24343889
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可