頚動脈洞症候群と血管迷走神経性失神を併発した症例に対する理学療法
説明
<p>【はじめに】失神は理学療法の臨床場面で経験する少なくない症候だが、頚動脈洞症候群(CSS)と血管迷走神経性失神(VVS)とを併発する症例の理学療法に関する報告は、我々が渉猟し得た範囲では無い。今回、両者の診断と治療に併行して理学療法を実施することにより、日常生活動作能力が改善した症例を経験したので報告する。</p><p>【倫理的配慮】ヘルシンキ宣言に則り本人に説明し同意を得た。</p><p>【症例提示】60歳代男性。咽頭頚部食道癌および上行結腸癌に対し、咽喉頭頚部食道摘出、両側頚部郭清、遊離空腸再建、甲状腺全摘、結腸右半切除を他院にて実施した。放射線治療後は自宅退院し外来にて加療していた。 術後5 ヶ月に当院の外来を受診した際に院内で意識消失し、集中治療室に入室した。精査の結果、頚部リンパ節への癌転移による混合型のCSSおよびVVSの併発と診断された。集中治療室の在室中も吸引刺激や咳込み、姿勢変化によりしばしば失神発作を呈し、発作前には眼の奥に痛みを呈する前駆症状を認めた。治療は癌への積極的加療が困難なため、フルドロコルチゾンによる体液量の管理とメトプロロールの内服を開始した。</p><p>【経過と考察】入院13日目に理学療法を開始した。初期介入時、姿勢変換や咳嗽を契機とした急激な血圧低下を頻繁に認めた。プログラムはVVSに対する起立負荷訓練に加え、CSSへの対応として症状を誘発する生活動作を避ける指導、さらに前駆症状出現時の失神回避法としてPhysical Counterpressure Maneuverの指導を組み合わせた。20日目には100mの歩行も可能となり、前駆症状出現時には回避法を行うなどの対応が可能となった。 病棟ADLは自立レベルとなったが、原疾患の予後や社会的事由により40日目に施設退院した。CSSとVVSはいずれも神経調節性失神の原因であるが、その機序や治療法は異なる。本症例のような複雑な病態を有する場合は、それぞれのメカニズムに合わせた理学療法プランニングが重要である。</p>
収録刊行物
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- 関東甲信越ブロック理学療法士学会
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関東甲信越ブロック理学療法士学会 38 (0), P-050-, 2020
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390565134813954176
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- NII論文ID
- 130007779668
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- ISSN
- 2187123X
- 09169946
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可