座位での酸素化不良を呈した気管切開後の頸髄損傷症例に対して呼吸理学療法を施行した一例

DOI
  • 芳賀 直人
    東京慈恵会医科大学附属病院リハビリテーション科
  • 大髙 愛子
    東京慈恵会医科大学附属病院リハビリテーション科
  • 野口 真実
    東京慈恵会医科大学附属病院リハビリテーション科
  • 岡道 綾
    東京慈恵会医科大学附属病院リハビリテーション科
  • 中山 恭秀
    東京慈恵会医科大学附属病院リハビリテーション科

抄録

<p>【はじめに】脊髄損傷の呼吸理学療法では呼吸練習器具を用いた方法が推奨されているが、気管切開症例は適応が限られる。今回、気管切開後に座位での酸素化不良を呈した頸髄損傷症例に対して横隔膜機能と胸郭可動性の向上を図り離床を進める事が可能となったため報告する。</p><p>【症例紹介】症例は70代男性で転倒によりC6椎体骨折・頚髄損傷を受傷し同日に頸椎後方除圧・固定術が施行された。術後早期に無気肺を認め、術後4日に気管切開し術後5日よりADL向上目的に理学療法を開始した。SpO2 は酸素8L投与で99%であり意思疎通はClosed Question で可能であった。改良Frankel分類はB3、ADLは全介助であった。</p><p>【経過】無気肺は早期に改善し術後35日に酸素投与が不要となったが、座位にて呼吸数が30回/分、SpO2が88%、呼吸苦がBorg scale17となり車椅子乗車は困難であった。浅速呼吸による呼吸仕事量増加で酸素化不良が生じたと考え評価を追加した。胸郭拡張差は腋窩部で0cm、剣状突起・第10肋骨部で1cmであり腹部隆起力は10RM 1kg、横隔膜肥厚率は14%であった。以上より横隔膜機能と胸郭可動性の低下を問題と捉え胸郭モビライゼーションと肋間筋ストレッチ、腹部重錘負荷を追加した。術後55日に改良Frankel分類は右C1、左C2となり胸郭拡張差は第10肋骨部で1.7cm、腹部隆起力は10RM 1.75kg、横隔膜肥厚率は84%と向上した。座位での呼吸数は22回/分、SpO2は98%、呼吸苦はBorg scale14となり車椅子乗車が可能となった。</p><p>【考察】本症例は呼吸機能向上を認めた。そのため、呼吸練習器具を用いない呼吸理学療法においても効果がある可能性が示唆された。横隔膜筋厚は%VCと、腹部隆起力はMIPと相関する。また、第10肋骨部の胸郭拡張差はzone of appositionや横隔膜収縮効率と関連し呼吸困難感や肺活量に関与する。本症例は横隔膜機能と胸郭可動性が向上した事により、肺活量・吸気筋力が増大し座位での酸素化不良が改善したと考える。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390565134814065024
  • NII論文ID
    130007779520
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.38.0_f-052
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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