半側空間無視症例に対する左方向への探索課題を中心とした理学療法効果について

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<p>【はじめに】今回、左右大脳半球損傷により重度の左半側空間無視(USN)を呈し、評価・治療に難渋した症例を経験した。無視空間へ自ら探索し、条件を段階的に負荷させる課題を実施した経過を報告する。</p><p>【症例】70代女性。左右前頭葉、右後頭葉・側頭葉に脳梗塞発症。第56病日に当院転院。BRSはⅥ-Ⅵ-Ⅵ。行動性無視検査日本版(BIT)では、通常検査22/146、行動検査が3/81点であり、重度USNを認めた。その他の高次脳機能障害として、注意障害、保続、記憶障害などを認めた。また、歩行では左側障害物への接触を認め、介助を要した。Timed up & go Test(TUG)は着座すべき椅子を見つけられず、測定困難だった。FIMは53点。尚、対象者に本報告の主旨について説明し同意を得た。</p><p>【経過】本症例は左空間の情報に対して注意を方向付けることが困難となり、その結果認識可能な右空間にて行為が成立していると推察した。さらに、左同名半盲や注意障害、保続といった症状も左USNを強める要因となっていると考えた。これらに対する治療プログラムとして、輪入れを使用した左方向への探索課題を中心に実施した。輪を入れる対象物を左右前後に設置し順番に入れることで、注意障害や保続の改善も図った。左後方の対象物の数・角度を増やすことで、難易度の調節を行った。</p><p>【結果】4週間の介入後、BITは通常検査38/146、行動検査11/81点となった。TUGは1週後に28.0秒、4週後には12.6秒と改善を認めた。歩行では障害物への接触の頻度が減ったが、未だ接触する場面も見られた。FIMは72点と向上した。</p><p>【考察】重度のUSNを呈した症例に対し左右の空間へ探索課題を実施し、ある程度の改善を認めた。無視空間の対象物を探索することで、視覚情報や触覚といった体性感覚が情報として収集され、空間構造の再学習化がなされたと考える。一方で、注意障害や保続などの影響も大きく、ADL要介助の一要因となっており、多角的なアプローチの必要性を感じた。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390565134814067072
  • NII論文ID
    130007779536
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.38.0_f-039
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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