理学療法に強い拒否が見られた症例に対する接し方について

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<p>【はじめに】身体接触拒否により介入が困難であった症例に対し,接し方を工夫したことで身体機能の改善を図れたため報告する.</p><p>【症例紹介】80代女性.既往に統合失調症・知的障害・認知症を有している.入所中の施設内で転倒し左大腿骨転子部骨折を受傷,整復固定術施行.2週間後に当院転院.症例は,身体接触に拒否があり,徒手介入や動作介助が困難である.FIM36点.コミュニケーションは,表出は可能だが,指示理解は困難.声掛けには「うるせー知らないよ」と答える.会話中,視線は口元に向き,表情全体を捉えず情動認識課題は,0/2点であった.また,発話内容から病識の欠如,理解力の低下が伺えた.症例報告にあたり,キーパーソンに説明し書面にて同意を得た.</p><p>【治療方針】症例は,情動認知の低下から自己が思い描く表情認識と他者が示した表情に差異がある.その為,他者とラポールを築けず,身体接触拒否に繋がると考えた.眼・口・鼻といった表情把握する重要部位に焦点を向けさせることや表情模倣にて情動認知やコミュニケーションが向上する等の報告がある.そこで,表出を大きく示し表情把握部位に注意を向けた接し方を行うことで,他者との表情認識の差異が修正され,身体接触への拒否が軽減すると考えた.</p><p>【治療方法・結果】症例は,質問への返答が行えない為,経験談に基づいた自発話を促す接し方を行った.その際,セラピストは,明瞭な表情で接し表情認識の向上を図った.徐々にセラピストの表情を捉えられた段階で,表情を模倣させ,共通認識を図った.3週目で他者の表情全体を捉え,会話が可能となる.4週目で病識の理解に至り,身体接触への拒否が軽減した.結果,情動認識課題2/2点,FIM78点となり施設退院となる.</p><p>【考察】情動認識能力の向上を図ることで他者との表情認識の差異が修正でき,言語でのコミュニケーションが確立した.その為,病識の理解に至り,身体接触が可能となった.これらの接し方は,接触を拒む症例に有効であると考える.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390565134814186880
  • NII論文ID
    130007779413
  • DOI
    10.14901/ptkanbloc.38.0_f-010
  • ISSN
    2187123X
    09169946
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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