災害復興における観光の役割と課題

書誌事項

タイトル別名
  • The Role and Challenges of Tourism in the Disaster Reconstruction
  • 災害復興における観光の役割と課題 : インドネシア・ムラピ山噴火災害を事例としたダークツーリズムの再定位
  • サイガイ フッコウ ニ オケル カンコウ ノ ヤクワリ ト カダイ : インドネシア ・ ムラピサン フンカ サイガイ オ ジレイ ト シタ ダークツーリズム ノ サイテイイ
  • The Reorientation of Dark Tourism Based on the Case of a Disaster Caused by the Eruption of Mt. Merapi, Indonesia
  • インドネシア・ムラピ山噴火災害を事例としたダークツーリズムの再定位

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抄録

本稿の目的は、被災を起因とした観光展開の分析を通じ、観光を通じた災害復興の可能性と課題を明らかにすることにある。具体的には2010年のインドネシア・ムラピ山噴火災害によって全戸焼失の被害を受けた山村を対象とする。近年、災害復興における観光の可能性への期待が国内外の被災地において示されている。しかし、ダークツーリズム論を中心とする既存研究は、記憶や教訓の継承など災害復興と観光が取り結ぶ関係性のごく一部を明らかにしてきたに過ぎなかった。そこで本稿では、復興過程を時系列的に分類し、各段階における観光事象の展開とその影響について明らかにしていくことを通じて、被災後の社会変動とその対応において、観光が果たしうる役割とその課題について考察した。結果、観光はボランティアツーリズムによる直接的な生活再建への貢献、及び被災地観光の生み出す収益による経済的貢献の2点について復興に寄与できる可能性を有していること、同時に、生み出された観光収益の限定性という課題が存在することを明らかにし、その上で、観光という営みが、災害復興という名の急激な社会変動の中で地域産業の回復を下支えする特質を有している点を指摘した。そして、それらの考察を通じ、被災地の観光とは、被災後の急激な社会変動の中で、観光の諸相・要素がせめぎあい・交じり合ながら形成される動態的なものであること、被災地のダークネスもその形成要素の一つに過ぎず、表出する内容・方法も復興過程の中で変動しえることを示した。

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