飛騨山脈・太郎兵衛平湿原池溏群(富山県)の陸水学的性状

書誌事項

タイトル別名
  • Limnological features of small pools in the Tarobe-daira Wetland, Hida mountain range, Toyama Prefecture, Japan
  • ヒダ サンミャク ・ タロウ ベエ ヘイ シツゲンチトウグン(トヤマケン)ノ リクスイガクテキ セイジョウ

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抄録

<p> 飛騨山脈の高山域に分布する池溏の形状,水質,生物について報告する。高山の池溏は特異な陸水環境であり,また近年は気温や降雪の経年変化の監視のための適地として注目されているものの,この地域の池溏群については半世紀来,調査活動が行われていない。このような山地の池溏群は,細かく畦で区分された田圃と形状が似ているため,「田」,「餓鬼田」と呼ばれてきた。池溏はその形態と位置により二つの型に区別できる。急斜面にある不規則な形の池溏と,平地か緩斜面にある孤立した丸い形の池溏である。二つの型の池溏とも雪融け水により涵養されるものであるが,前者は一時的な水の流れに沿って斜面が侵食され不規則な形となり,後者の孤立した型は風により岸を均等に侵食し円形の湖盆を成したものである。<br> 調査した6箇所の池溏の水のpHは池溏の大きさや形状の違いには関係なく4.5前後であったが,この値は50年前の観測値と比べると0.7程低くなっている。恐らく近年の酸性化した降水による変化であろう。水中に植生が見られない池溏では堆積した泥の酸素消費により,真昼の時間帯になっても酸素濃度は不飽和のままであった。一方,ミズゴケが水中に進入している池溏では,真昼に酸素過飽和が観測された。ミズゴケの酸素生産速度は温度に依存する。現地の17℃の水温では生産速度は0.26±0.13 mgO2 wet g-1 h-1 と推定されたが,27℃ では0.72±0.29 mgO2 wet g-1 h-1 に増加した。<br> 調査した池溏の底泥では糸状の黄緑色藻綱のTribonema affinisと好酸性の珪藻綱,例えばFrustulia rhomboidesPinnularia spp. が優占していた。</p>

収録刊行物

  • 陸水学雑誌

    陸水学雑誌 80 (1), 1-11, 2019-02-15

    日本陸水学会

被引用文献 (2)*注記

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参考文献 (10)*注記

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